医院名:あおと整形外科クリニック 住所:〒500-8315 岐阜県岐阜市島田東町41-1
電話番号:058-252-0220
2025.10.02

骨密度を上げるには?整形外科でできること

骨密度を上げるには?「いつの間にか骨折」を防ぐ整形外科での骨粗しょう症対策

「最近、背中が丸くなった気がする」「ちょっと転んだだけで手首や大腿骨を折ってしまった」—これらは、骨粗しょう症が原因で骨密度が低下しているサインかもしれません。

骨粗しょう症は、骨がもろくなり、骨折しやすい状態になる病気です。特に女性は閉経後に急激に骨密度が低下し、適切な対策をしないと、気づかないうちに背骨が潰れてしまう「いつの間にか骨折(圧迫骨折)」や、要介護状態につながる大腿骨近位部骨折のリスクが高まります。

骨密度は年齢とともに低下しますが、「もう手遅れだ」と諦める必要はありません。整形外科では、正確な診断科学的根拠に基づいた治療により、骨密度を上げ、骨折を防ぐことが可能です。岐阜市にあるあおと整形外科クリニックで、あなたの骨の健康を守りましょう。

なぜ骨密度は低下するのか?骨粗しょう症の原因

骨は、カルシウムなどのミネラルを主成分とし、古い骨を壊す「骨吸収」と、新しい骨を作る「骨形成」というサイクル(骨代謝)を繰り返して、常に作り変えられています。

骨粗しょう症は、このバランスが崩れることで起こります。

1. 加齢:骨吸収のスピードが骨形成を上回る

特に50歳以降、骨を作る力が衰え、骨吸収のスピードが優位になることで、骨全体がスカスカともろくなっていきます。

2. 女性ホルモンの減少(閉経後)

女性は、骨の健康を保つエストロゲンというホルモンが閉経後に急激に減少します。これにより骨吸収が加速し、男性よりも早いスピードで骨密度が低下します。

3. 運動不足・栄養不足

骨に適度な負荷(運動)がかからないと骨形成が促進されません。また、骨の材料となるカルシウムや、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが不足することも大きな原因です。

骨密度を上げるために必要な「3つの柱」

骨密度を改善し、骨折を防ぐためには、整形外科での専門的な治療と、日々の生活習慣の改善を組み合わせたアプローチが必要です。

1. 骨密度を改善する「薬物療法」(整形外科での治療の柱)

生活習慣の改善だけでは不十分な場合、最も効果的なのは薬による治療です。整形外科では、骨粗しょう症の状態や、骨折のリスクに応じて最適な薬を選択します。

  • 骨吸収を抑える薬(ビスホスホネート製剤など): 骨が壊されるのを防ぎ、骨密度低下の進行を遅らせます。
  • 骨形成を促す薬(テリパラチド製剤など): 新しい骨を作る働きを強力に助け、骨密度を大きく改善する効果が期待できます。
  • 骨代謝を調整する薬: 女性ホルモンに似た作用を持つ薬など、骨吸収と骨形成のバランスを整えます。

当院では、内服薬だけでなく、月に一度や半年に一度で済む注射剤も積極的に取り入れ、患者様の負担を減らし、治療の継続をサポートしています。

2. 骨を強くする「運動療法」(適切な負荷をかける)

骨は、負荷(重力や筋肉の牽引力)がかかることで強くなります。単なる散歩だけでなく、骨に刺激を与える運動を組み合わせることが重要です。

  • ◼︎ウォーキング
  • かかとから地面に着地し、適度な衝撃を骨に伝えるように意識して歩きましょう。
  • ◼︎筋力トレーニング
  • 太ももや背筋など、大きな筋肉に負荷をかける運動(スクワット、かかと上げなど)は、骨への刺激と転倒予防に繋がります。
  • ◼︎理学療法士による指導
  • 当院では、専門の理学療法士が、骨折のリスクを考慮したうえで、安全かつ効果的に骨密度を上げるための正しい運動方法やフォームを丁寧に指導します。

3. 骨の材料を摂る「栄養療法」(食事の見直し)

どんなに良い薬や運動をしても、骨の材料が不足していては意味がありません。

  • ◼︎カルシウム
  • 牛乳、乳製品、小魚、小松菜、豆腐などから積極的に摂取しましょう。
  • ◼︎ビタミンD
  • カルシウムの吸収を助け、骨を強くするのに不可欠です。サケ、サンマなどの魚類、きのこ類に多く含まれます。また、日光浴(適度な紫外線)によって体内で合成されます。
  • ◼︎ビタミンK
  • 骨にカルシウムを取り込むのを助けます。納豆、緑黄色野菜などに豊富です。

あおと整形外科クリニックでの骨粗しょう症の検査と治療の流れ

骨粗しょう症の対策は、まず正確な診断から始まります。「自分は大丈夫」と自己判断せずに、一度検査を受けることが大切です。

1. 骨密度の精密検査(DXA法)

当院では、最も精度の高い検査法であるDXA(デキサ)法を用いて、腰椎(腰の骨)と大腿骨頸部(太ももの付け根)の骨密度を測定します。この結果をもとに、あなたの骨の状態を正確に把握します。

2. 血液・尿検査

骨代謝の状態(骨が壊されている速さや、作られている速さ)を評価するため、血液や尿の検査を行います。これにより、薬物療法の種類を決定するうえでの重要な情報が得られます。

3. 個別治療計画の立案と継続的なフォローアップ

検査結果と、年齢、既往歴、骨折リスクなどを総合的に判断し、専門医である院長が最適な薬物療法を選択します。さらに、理学療法士による運動指導や生活指導を組み合わせ、骨密度が改善しているかを定期的にチェックしながら、長期的にサポートしていきます。

院長からのメッセージ:骨の健康は未来の活動力です

骨粗しょう症は、痛みなどの自覚症状がないまま進行し、「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれます。しかし、骨折してしまってからでは遅すぎます。

私たちは、骨折予防を通じて、患者様がいつまでも旅行や趣味、そして家族との活動を楽しめるよう、未来の健康をサポートしたいと考えています。

「最近、背が縮んだ気がする」「閉経後、骨の健康が気になる」という方は、ぜひ一度、あおと整形外科クリニックにご相談ください。あなたの骨密度を改善し、活動的な毎日を守るお手伝いをさせていただきます。

監修者情報

監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)

2025.09.18

高齢者の転倒予防と筋力トレーニング

高齢期の「転倒」はなぜ危険?専門医が教える予防の極意と安全な筋力トレーニング

「ちょっとした段差でつまずいた」「急に足がもつれてヒヤリとした」—高齢期の転倒は、一過性の事故ではありません。それは要介護状態への入り口であり、生活の質(QOL)を大きく低下させる最も重大なリスクの一つです。

転倒によって引き起こされる骨折(特に大腿骨近位部骨折)は、長期入院や手術を必要とし、多くの方がそのまま寝たきりへと移行してしまいます。しかし、転倒は決して避けられない「老化現象」ではありません。適切な知識と予防策、そして継続的な筋力・バランス訓練で、そのリスクは大幅に減らすことができます。

岐阜市のあおと整形外科クリニックでは、日本整形外科学会専門医である院長と理学療法士が連携し、科学的根拠に基づいた転倒予防と安全な運動器リハビリテーションを提供しています。

高齢期に転倒リスクが高まる3つの主な要因

高齢者が転倒しやすい背景には、加齢に伴う複合的な身体機能の低下があります。

1. 運動機能の低下:筋力・バランス能力の衰え

転倒の最大の原因は、足腰の筋力の低下、特に太もも(大腿四頭筋)とふくらはぎ(下腿三頭筋)の筋力低下です。これらの筋肉は、段差を乗り越える力や、バランスを崩した瞬間に踏みとどまる瞬発力を担っています。 また、平衡感覚や、足の裏から地面の情報を得る固有受容感覚が鈍くなることも、小さな傾きに気づきにくくなる原因です。

2. 骨の脆弱化:骨粗しょう症との深刻な関連

高齢者、特に女性は骨粗しょう症を患っているケースが多く、骨密度が低下しています。転倒自体は予防できても、万が一転んでしまった場合に骨折するリスクが極めて高くなります。 骨折を機に活動量が低下し、さらなる筋力低下を招くという**「負の連鎖」を断ち切るには、転倒予防と同時に骨を強くする治療(骨粗しょう症治療)**が必須です。

3. 視覚・内科的要因と環境要因

遠近感の低下や白内障などの視覚の衰えは、足元の障害物を見落とす原因になります。さらに、服用している薬(睡眠薬、降圧薬など)によるふらつきやめまい、血圧の急な変動などもリスクを高めます。加えて、ご自宅の危険な段差や滑りやすい床といった環境要因も深く関わっています。

【セルフチェック】あなたの転倒リスク度を測る

以下の項目のうち、いくつ当てはまるかチェックしてみましょう。当てはまる項目が多いほど、転倒のリスクが高いと考えられます。

1. 過去1年間に転倒したことがある

2. 立ち上がる時や歩き始めに膝や股関節が痛むことがある

3. 杖や手すりがないと歩行に不安を感じる

4. 片足立ちを5秒以上続けることができない

5. 医師から骨粗しょう症の診断を受けている

6. 家の中に段差や電気コードなど、つまずきやすい場所が多い

7. 散歩や外出の機会が週に3日未満である

8. 複数の薬(5種類以上)を服用している

チェックが3つ以上ついた方は、整形外科専門医による詳細な検査と、専門的なリハビリテーションを受けることを強くおすすめします。

専門医が推奨する転倒予防のための安全なトレーニング

転倒予防には、筋力(特に下肢)とバランス能力を同時に鍛える運動が最も効果的です。無理なく、毎日継続できることから始めましょう。

1. 椅子を使った太ももの筋力アップ(大腿四頭筋)

目的: 立ち上がりや階段昇降に必要な膝周りの筋肉を強化します。

  1. 深く座らず、背筋を伸ばして椅子に浅く座ります。
  2. 片方の足をゆっくりと持ち上げ、膝をピンと伸ばしきった状態5秒間静止します。太ももの前面に力が入っているのを確認します。
  3. ゆっくりと下ろし、逆の足も同様に行います。 (左右それぞれ10回を1セットとし、無理のない範囲で2〜3セット行いましょう。)

2. かかと上げ(ふくらはぎ・下腿三頭筋)

目的: 歩行時の蹴り出しと、バランスを調整する能力を高めます。

  1. 壁や安定した家具に両手を添えて立ちます。
  2. ゆっくりと、できる限りかかとを高く持ち上げます。
  3. 上げた状態で2〜3秒間キープし、ゆっくりともとに戻します。 (10回を1セットとし、ふらつきに注意しながら行いましょう。)

3. 片足立ち訓練(バランス能力・体幹)

目的: 転びそうになった時に踏みとどまる、片足で体を支える能力を養います。

  1. 壁や手すりのそばに立ち、すぐに手を添えられるようにします。
  2. 片方の足を床から離し、30秒間を目安にキープします。
  3. 慣れてきたら、手を壁から少し離したり、目を閉じたりして難易度を上げてみましょう。 (左右交互に、必ず安全を確保して行います。もし30秒が難しい場合は、目標時間を短く設定しましょう。)

あおと整形外科クリニックが行うトータル転倒予防サポート

転倒予防は、単なる筋力トレーニングだけで完結しません。当院では、専門医と理学療法士が連携し、以下のような多角的なアプローチで、岐阜市の皆様の安全で活動的な生活をサポートします。

1. 正確な評価と診断

  • ◼︎詳細な問診・視診
  • 転倒時の状況、歩行パターン、生活環境を詳しくお伺いします。
  • ◼︎画像検査(X線、エコー)
  • 膝や股関節の変形性関節症の有無や、過去の骨折の痕跡などを確認します。
  • ◼︎骨密度検査
  • 転倒による重症化リスクを評価するため、骨粗しょう症の有無を正確に診断し、必要に応じて治療を開始します。

2. 専門的なリハビリテーション(運動器リハビリテーション)

国家資格を持つ理学療法士が、医学的根拠に基づいたリハビリテーションを提供します。

  • ◼︎個別運動療法
    患者様一人ひとりの筋力、柔軟性、歩行の安定性を評価し、オーダーメイドの運動プログラムを指導します。特に、日常生活動作(立ち座り、階段昇降)に直結する機能の改善に重点を置きます。
  • ◼︎歩行・姿勢指導
  • 転倒に繋がりやすい歩行のクセ姿勢の偏りを修正し、安定した歩き方を習得できるよう指導します。
  • ◼︎装具療法
  • 足底板(インソール)やサポーターなどを活用し、足元のアライメントを整え、負担を軽減します。

3. 骨粗しょう症治療と生活指導

骨密度が低い方には、骨吸収を抑えたり、骨形成を促したりする薬物療法を積極的に行い、骨折のリスクそのものを軽減します。また、ご自宅の環境整備や、適切な栄養摂取、服薬管理に関するアドバイスも行います。

院長からのメッセージ:転倒不安を安心に変えるために

転倒の不安は、知らず知らずのうちに活動範囲を狭め、心の健康までも蝕んでしまいます。私たちの目標は、ただ転倒を防ぐことではなく、自信を持って外に出かけられる、活動的な毎日を取り戻していただくことです。

「年のせい」だと諦めず、その一歩を踏み出す勇気を持って、私たち専門医にご相談ください。安全と安心を土台とした健康な毎日を、一緒に築いていきましょう。

監修者情報

監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)

2025.09.04

手首の腱鞘炎(ドケルバン病)の治療:痛みから解放され、快適な日常へ

「親指を動かすと手首が痛い」「タオルを絞るのがつらい」「赤ちゃんを抱っこすると激痛が走る」――もし、あなたがこのような症状に悩まされているなら、それは「手首の腱鞘炎(けんしょうえん)」、特に「ドケルバン病」かもしれません。

ドケルバン病は、手首の親指側にある腱と、その腱を包む「腱鞘(けんしょう)」というトンネルのような組織に炎症が起きることで発症します。日常生活で手や指を酷使する方に多く見られ、特に女性に多い傾向があります。

もし、この手首の痛みで日常生活に支障が出ている、仕事や育児に集中できないと感じているなら、私たち整形外科があなたの力になれるかもしれません。あおと整形外科クリニックでは、患者様一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた丁寧な診断と治療を通じて、痛みからの解放、そして快適な日常を取り戻すサポートをいたします。

ドケルバン病とは?なぜ手首が痛むのか?

ドケルバン病は、正式には「狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)」の一種で、手首の親指側に位置する2つの腱(短母指伸筋腱と長母指外転筋腱)と、それらを覆う腱鞘に炎症が生じる病気です。

ドケルバン病が起こるメカニズム

私たちの手や指は、腱という紐のような組織が筋肉の力を骨に伝え、関節を動かすことで機能しています。この腱は、スムーズに動くように「腱鞘」というトンネル状の組織の中を通っています。腱鞘は、腱が骨から浮き上がらないように押さえつけ、摩擦を減らす役割をしています。

しかし、手首や親指を使いすぎると、この腱と腱鞘の間で摩擦が生じ、炎症が起こります。炎症が続くと、腱鞘が厚くなったり、腱自体が腫れたりして、腱が腱鞘の中をスムーズに滑ることができなくなります。その結果、動かすたびに引っかかりや痛みが生じるようになるのです。

特に、ドケルバン病では、手首の親指側にある「第1背側コンパートメント」という狭い腱鞘の中で炎症が起こりやすく、この部位に特有の痛みを引き起こします。

ドケルバン病になりやすい人

ドケルバン病は、以下のような特徴を持つ方に多く見られます。

  • ◾️女性
  • 特に妊娠中、出産後、授乳期の女性や更年期の女性に多く発症します。これは、ホルモンバランスの変化が腱鞘の炎症に関与すると考えられているためです。
  • ◾️手や指をよく使う仕事や趣味を持つ人
    • パソコン作業(マウスやキーボードの操作)
    • スマートフォンの長時間使用(特に親指でのフリック入力など)
    • 美容師、調理師、医療従事者など、手先を使う職業
    • テニス、ゴルフ、バドミントンなど、手首や親指を酷使するスポーツ
  • ◾️育児中の親
  • 赤ちゃんを抱っこする、授乳する、おむつを替えるなど、親指を広げたり手首をひねったりする動作を繰り返すことで、手首に大きな負担がかかります。
  • ◾️特定の病気を持つ人
  • 関節リウマチや糖尿病のある方も、腱鞘炎を発症しやすい傾向があります。

ドケルバン病の主な症状

ドケルバン病の症状は、手首の親指側の痛みが特徴的です。

  • ◾️手首の親指側の痛み
  • 特に親指を広げたり、動かしたりする際に、手首の親指の付け根あたりに鋭い痛みを感じます。
  • ◾️腫れやしこり
  • 痛みのある部分に、腫れや、触ると硬いしこりのようなものが感じられることがあります。
  • ◾️動作時の痛み
    • 物をつかむ、握る、持ち上げる動作
    • タオルを絞る動作
    • ドアノブを回す動作
    • 赤ちゃんを抱っこする動作
    • スマートフォンの操作
    • キーボードやマウスの操作
  • ◾️しびれや放散痛
  • 症状が進行すると、痛みが親指や前腕に広がったり、しびれを感じたりすることもあります。

これらの症状は、日常生活の様々な場面で不便や苦痛をもたらし、QOL(生活の質)を著しく低下させる可能性があります。痛みを我慢せず、早めに専門医に相談することが大切です。

ドケルバン病の診断と検査

あおと整形外科クリニックでは、ドケルバン病の診断のため、まず患者様から症状について詳しくお話を伺います。いつから、どのような時に、どのくらいの痛みがあるのか、仕事や趣味、育児で手を使う頻度などを確認します。

次に、手首の視診と触診を行い、痛みのある部位の腫れや圧痛(押した時の痛み)の有無を確認します。 ドケルバン病の診断に特徴的な検査として、「フィンケルシュタインテスト」があります。

フィンケルシュタインテスト

  1. 親指を他の指で包み込むようにして、軽く握りこぶしを作ります。
  2. そのまま手首を小指側にゆっくりと曲げます。

この時に、手首の親指側に強い痛みが生じれば、ドケルバン病の可能性が高いと判断されます。

また、必要に応じてX線(レントゲン)検査を行い、骨の異常や他の病気(関節炎など)がないかを確認します。腱鞘や腱自体の状態を詳しく見るために、超音波(エコー)検査を行うこともあります。エコー検査は、リアルタイムで腱鞘の肥厚や腱の炎症の有無を確認でき、診断の補助や治療方針の決定に役立ちます。

これらの丁寧な診察と検査を通じて、ドケルバン病の状態を正確に診断し、患者様一人ひとりに最適な治療計画を検討していきます。

ドケルバン病の治療法:痛みを和らげ、再発を防ぐ

ドケルバン病の治療は、症状の程度や原因、患者様のライフスタイルに合わせて、様々な方法を組み合わせて行われます。基本的には手術をしない「保存療法」が中心となりますが、症状が改善しない場合には「手術療法」も選択肢となります。

1. 保存療法:まずは手首を休ませることから

① 安静と活動制限

最も基本的な治療法であり、最も重要なステップです。痛みの原因となっている手首や親指の使いすぎを避け、患部を安静に保つことが大切です。

  • ◾️作業内容の見直し
  • パソコン作業の姿勢やマウスの持ち方、スマートフォンの操作方法などを見直します。
  • ◾️育児中の工夫
  • 授乳クッションや抱っこ紐を工夫し、手首への負担を減らします。
  • ◾️スポーツ活動の調整
  • 痛みが強い間は、原因となるスポーツ活動を一時的に休止したり、練習量を減らしたりします。
② 装具やサポーターによる固定

手首や親指の動きを制限し、腱鞘への負担を軽減するために、装具(シーネ)やサポーターを使用します。これにより、患部を安静に保ち、炎症の悪化を防ぐことができます。

③ 薬物療法
  • ◾️内服薬
  • 炎症を抑え、痛みを和らげるために、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を処方することがあります。
  • ◾️外用薬
  • 湿布や塗り薬(消炎鎮痛剤の軟膏やゲル)を患部に貼ったり塗ったりして、局所の炎症を抑えます。
④ 注射療法(ステロイド注射)

保存療法の中でも、特に効果が期待できるのが、腱鞘内に直接ステロイド剤と局所麻酔薬を注入する治療です。ステロイドには強力な抗炎症作用があり、腱鞘の炎症を効率的に抑えることができます。 多くの場合、1回の注射で数週間から数ヶ月にわたって痛みが軽減し、そのまま治癒に至ることも少なくありません。ただし、ステロイド注射は頻繁に行うと、腱が脆くなるなどの副作用のリスクがあるため、医師の判断のもと、適切な間隔と回数で行われます。あおと整形外科クリニックでは、痛みの状態を詳しく診察し、患者様と相談しながら、注射療法の適応を慎重に判断いたします。

⑤ リハビリテーション(運動療法)

痛みが落ち着いてきたら、再発予防と機能改善のためにリハビリテーションを行います。国家資格を持つ理学療法士が、患者様一人ひとりの状態に合わせた運動療法を指導します。

  • ◾️ストレッチ
  • 硬くなった前腕の筋肉や手首、親指のストレッチを行い、柔軟性を高めます。
  • ◾️筋力トレーニング
  • 手首や指の安定性を高めるための軽い筋力トレーニングを行います。
  • ◾️動作指導
  • 日常生活や仕事、スポーツにおける手首や親指の負担を減らすための正しい体の使い方や動作の工夫を指導します。
  • ◾️ハイドロリリース(筋膜リリース)
  • 腱鞘炎の周囲の筋肉や筋膜が硬くなっている場合、超音波エコーガイド下でハイドロリリースを行うことで、筋肉の滑走性を改善し、痛みの軽減や可動域の改善を図る場合があります。

これらのリハビリテーションは、単に痛みを和らげるだけでなく、根本的な原因にアプローチし、再発しにくい身体づくりを目指します。

⑥ 物理療法

血行を促進し、炎症を抑え、痛みを和らげるために、様々な物理療法を行います。あおと整形外科クリニックでは、運動器リハビリの補助として機器を用いた物理療法を提供しています。

2. 手術療法:保存療法で改善しない場合

保存療法を数ヶ月続けても症状が改善しない場合や、痛みが繰り返し再発して日常生活に大きな支障をきたす場合には、手術療法が検討されます。

手術は、狭くなった腱鞘を切開し、腱がスムーズに動くようにするものです。通常、局所麻酔で行われ、手術時間は比較的短時間で済みます。最近では、超音波エコーガイド下で小さな切開から行う低侵襲な手術方法も行われることがあります。

手術後は、しばらく安静期間を設けた後、リハビリテーションを行い、手首の機能回復を目指します。手術により、多くの場合、痛みが劇的に改善し、日常生活や仕事、スポーツへの復帰が可能になります。

ドケルバン病の予防と日常生活での注意点

ドケルバン病を予防し、再発を防ぐためには、日常生活での工夫が非常に重要です。

  • ◾️手首や親指の使いすぎに注意
  • 特定の動作を長時間繰り返さないよう、こまめに休憩を取りましょう。
  • ◾️正しい姿勢と動作
  • パソコン作業では、手首が不自然に曲がらないよう、キーボードやマウスの位置を調整しましょう。
  • ◾️適切な道具の使用
  • クッション性のあるマウスパッドや、手首をサポートするサポーターなどを活用するのも良いでしょう。
  • ◾️ストレッチの習慣化
  • 日頃からふくらはぎや前腕、手首のストレッチを行い、筋肉の柔軟性を保ちましょう。
  • ◾️育児中の工夫
  • 赤ちゃんを抱っこする際は、手首だけでなく、腕全体や体幹を使って抱えるように意識しましょう。授乳クッションや抱っこ紐を積極的に利用することも大切です。
  • ◾️痛みを我慢しない
  • 少しでも痛みを感じたら、無理をせず、早めに医療機関を受診しましょう。早期に治療を開始するほど、回復も早まります。

ドケルバン病は、つらい痛みですが、適切な診断と治療、そして日頃のケアによって、多くの方が痛みから解放され、快適な日常を取り戻すことができます。手首の痛みでお悩みでしたら、一人で抱え込まず、あおと整形外科クリニックにご相談ください。私たちは、あなたの痛みに寄り添い、最適な治療とサポートを提供いたします。

FAQ

Q1:ドケルバン病は自然に治りますか?

A1:軽症の場合や、原因となる動作を完全にやめられる場合は、自然に治ることもありますが、多くの場合、痛みが慢性化しやすい傾向があります。特に、育児中の方や手を使う仕事の方は、痛みの原因となる動作を完全に避けることが難しいため、放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。痛みが続く場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。

Q2:ドケルバン病の注射は痛いですか?何回まで打てますか?

A2:注射の際には、局所麻酔薬も一緒に注入するため、一般的には「歯医者さんの麻酔注射くらいの痛み」と表現されることが多いです。注射後、一時的に痛みが強くなることもありますが、通常は数日以内に和らぎます。ステロイド注射の回数に明確な制限はありませんが、腱が弱くなるなどの副作用のリスクを考慮し、医師が慎重に判断します。通常は、数ヶ月の間隔を空けて、数回までが目安とされています。

Q3:ドケルバン病の治療で、サポーターやテーピングは効果がありますか?

A3:はい、サポーターやテーピングは、手首や親指の動きを制限し、腱鞘への負担を軽減する効果が期待できます。特に、痛みが強い急性期や、どうしても手を使わなければならない場合に有効です。ただし、長期間固定しすぎると、かえって手首が硬くなることもあるため、医師や理学療法士の指導のもと、適切に使用することが大切です。

Q4:ドケルバン病の予防のために、日常生活でできることはありますか?

A4:手首や親指の使いすぎを避け、こまめに休憩を取ることが重要です。パソコン作業では、手首が不自然に曲がらないよう、キーボードやマウスの位置を調整しましょう。育児中の方は、授乳クッションや抱っこ紐を工夫し、手首への負担を減らすことが大切です。また、日頃から手首や前腕のストレッチを行い、筋肉の柔軟性を保つことも予防に繋がります。

Q5:ドケルバン病と診断されたら、手術が必要になりますか?

A5:ドケルバン病の治療は、まず安静や薬物療法、装具による固定、注射療法、リハビリテーションなどの「保存療法」から始めます。これらの保存療法で多くの方が改善します。しかし、数ヶ月間保存療法を続けても痛みが改善しない場合や、痛みが繰り返し再発して日常生活に大きな支障をきたす場合には、手術療法が検討されます。手術は、狭くなった腱鞘を切開して腱への圧迫を取り除くもので、多くの場合、良好な結果が得られます。

📚 参考文献

  1. ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/de_quervain_disease.html
  2. 腱鞘炎(ドケルバン病) | 慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A – オクノクリニック
  3. https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/kensyouen.html
  4. 腱鞘炎の注射治療における痛み・効果・副作用を医師が解説 | リペアセルクリニック東京院
  5. https://fuelcells.org/topics/53021/

🔖 監修者情報

監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)

2025.08.21

子どものかかとの痛み(シーバー病)とは:成長期の足を守るために

お子さんが「かかとが痛い」と訴えたり、運動後に足をかばうように歩いたりしていませんか?特に、活発にスポーツをしているお子さんの場合、そのかかとの痛みは「シーバー病」かもしれません。シーバー病は、成長期の子ども特有の足のトラブルで、適切なケアを行うことで痛みを和らげ、安心してスポーツや日常生活を続けられるようになります。

もし、お子さんのかかとの痛みでお悩みでしたら、私たち整形外科がその不安に寄り添い、サポートいたします。あおと整形外科クリニックでは、お子さんの成長と活動を妨げないよう、丁寧な診断と一人ひとりに合わせた治療計画で、健やかな成長を応援しています。

シーバー病(踵骨骨端症)とは?なぜ成長期の子どもに多いの?

シーバー病は、正式には「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」と呼ばれ、主に8歳から15歳くらいの成長期にある子どもに多く見られるかかとの痛みです。特に活発な男の子に多い傾向があります。

なぜこの時期に発症しやすいのでしょうか?それは、子どもの骨が成長する過程に秘密があります。 大人の骨は一体ですが、子どもの骨にはまだ「骨端線(こったんせん)」、または「成長軟骨板」と呼ばれる柔らかい部分があります。かかとの骨(踵骨)にもこの骨端線が存在し、ここから骨が伸びて成長していきます。

しかし、この成長軟骨板は、まだ成熟した骨のように強くありません。この時期に、ランニングやジャンプなど、かかとに繰り返し強い衝撃や負担がかかると、アキレス腱や足の裏の腱膜(足底腱膜)が骨端線を引っ張り、小さな損傷や炎症を引き起こしてしまうのです。これがシーバー病のメカニズムです。例えるなら、まだ柔らかい成長途中の骨に、強い力が集中してかかり続けることで、痛みが生じる状態と言えるでしょう。

シーバー病の主な原因

シーバー病は、単一の原因で発症することは少なく、いくつかの要因が組み合わさって発症することがほとんどです。

  • ◾️過度な運動量
    サッカー、バスケットボール、陸上競技、バレーボールなど、走る・跳ぶ動作が多いスポーツをしている子どもに特に多く見られます。練習量や試合が多いと、かかとへの負担が蓄積されやすくなります。
  • ◾️アキレス腱やふくらはぎの筋肉の柔軟性不足
  • 成長期には、骨が急激に伸びる一方で、筋肉や腱の成長が追いつかないことがあります。特にふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)やアキレス腱が硬いと、かかとの骨端線への牽引力が強くなり、負担が増加します。
  • ◾️足の構造的な問題
    • ・扁平足(へんぺいそく)
    • 足の裏のアーチが低く、地面に接する面積が広い状態です。衝撃吸収能力が低下し、かかとへの負担が増えやすくなります。
    • ・ハイアーチ(甲高):逆にアーチが高すぎる場合も、衝撃吸収がうまくいかず、特定の部位に負担が集中することがあります。
  • ・不適切な靴
  • クッション性が低い靴、かかとのホールドが不安定な靴、サイズが合わない靴なども、かかとへの衝撃を吸収しきれず、症状を悪化させる原因となります。
  • ・急激な体重増加
  • 体重が増えると、当然ながら足にかかる負担も大きくなります。

シーバー病の主な症状

シーバー病の代表的な症状は、かかとや足の裏の痛みです。

  • ◾️運動時や運動後の痛み
  • 走ったり、跳んだりした時、特に運動後に、かかとの後ろ側や底の部分に痛みを感じます。
  • ◾️歩き始めの痛み
  • 朝起きて最初の一歩や、長く座っていた後に立ち上がった時に、かかとが痛むことがあります。動き出すと痛みが和らぐこともありますが、これは足底腱膜炎と共通する特徴でもあります。
  • ◾️かかとを押すと痛い(圧痛)
  • かかとの後ろや底の部分、特にアキレス腱がかかとの骨に付着しているあたりを押すと強い痛みを感じます。
  • ◾️つま先歩きになる
  • 痛みを避けるために、無意識のうちにかかとを地面につけず、つま先で歩くようになるお子さんもいます。
  • ◾️かかとの軽い腫れ
  • 痛みのある部位に、わずかな腫れが見られることがあります。

これらの症状は、お子さんの運動能力を低下させるだけでなく、日常生活にも影響を与えることがあります。痛みを我慢させたり、「成長痛だから仕方ない」と放置したりせずに、早めに専門医に相談することが大切です。

シーバー病の診断と検査

あおと整形外科クリニックでは、お子さんのかかとの痛みに対し、日本整形外科学会専門医である院長が丁寧に診察を行います。

まず、お子さんや保護者の方から、いつから、どのような時に、どのくらい痛むのか、どのようなスポーツをしているのか、運動量や頻度はどのくらいかなどを詳しくお伺いします。次に、足の視診と触診を行い、かかとのどの部分に痛みがあるのか、腫れや熱感の有無、足のアーチの形、足首やふくらはぎの柔軟性などを細かく確認します。

診断の確定には、画像検査が重要です。

  • ◾️X線(レントゲン)検査
  • かかとの骨端線(成長軟骨板)の状態や、骨の異常がないかを確認します。シーバー病の場合、骨端線が不規則に見えたり、骨が分節しているように見えたりすることがあります。また、他の骨の病気や骨折の可能性を除外するためにも重要です。
  • ◾️超音波(エコー)検査
  • 必要に応じて、超音波エコー検査を行うこともあります。エコー検査は、骨端線周辺の炎症やむくみ、アキレス腱の状態などをリアルタイムで詳しく観察でき、診断の補助として役立ちます。

これらの丁寧な診察と検査を通じて、シーバー病の状態を正確に診断し、お子さん一人ひとりに最適な治療方針を検討していきます。

シーバー病の対処法・治療法

シーバー病の治療は、基本的に手術を必要としない「保存療法」が中心となります。お子さんの痛みを和らげ、安全に活動を再開できるよう、様々な方法を組み合わせて行います。

1. 安静と活動制限:最も重要なステップ

痛みの原因となっている運動を一時的に制限し、かかとへの負担を減らすことが何よりも大切です。痛みが強い間は、ランニングやジャンプを伴うスポーツ活動を控え、安静を保つようにします。完全に運動を中止する必要がない場合でも、練習量や強度を調整するよう指導します。

2. アイシング:炎症を抑える

運動後や痛みが強い時には、氷嚢や保冷剤をタオルで包んで、かかとの痛む部分に15~20分程度当てて冷やします。これにより、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。

3. ストレッチとマッサージ:柔軟性の向上

硬くなったふくらはぎの筋肉やアキレス腱、足底腱膜の柔軟性を高めるストレッチは、かかとへの負担を軽減するために非常に重要です。

  • ふくらはぎのストレッチ:壁に手をつき、痛い方の足を後ろに引いて、かかとを地面につけたまま、ふくらはぎをゆっくり伸ばします。
  • 足底腱膜のストレッチ:ゴルフボールやテニスボールを足の裏で転がしてマッサージしたり、つま先を手で持って足の裏を伸ばしたりします。 理学療法士が、お子さんの身体の状態に合わせた効果的なストレッチやマッサージの方法を丁寧に指導します。
  • 4. 靴の見直しとインソールの使用

クッション性が高く、かかとをしっかりと包み込み、安定性のあるスポーツシューズや普段履きの靴を選ぶことが大切です。 また、かかとの負担を軽減するために、「ヒールカップ」や「かかとを高くするインソール(足底板)」を使用することが有効です。これらは、かかとへの衝撃を吸収したり、アキレス腱の牽引力を和らげたりする効果が期待できます。あおと整形外科クリニックでは、お子さんの足の形や症状に合わせた靴選びやインソールの活用について具体的なアドバイスを行っています。

5. 理学療法・リハビリテーション

国家資格を持つ理学療法士が、お子さんの身体の使い方や動きの癖を評価し、適切なリハビリテーションメニューを作成します。

  • ◾️運動療法
  • 足首や足の指の筋力強化、バランス能力の改善、正しい歩き方や走り方の指導などを行います。
  • ◾️姿勢の改善
  • 姿勢の偏りや、体幹の不安定さが原因となることもあるため、全身のバランスを整える指導も行います。

6. 物理療法

痛みの軽減や組織の回復を促すために、運動器リハビリの補助として物理療法を行います。血行促進、炎症の抑制、痛みの緩和を図ります。

シーバー病の治療は、痛みがなくなるだけでなく、再発を防ぐためのケアが重要です。リハビリテーションを通じて、柔軟性、筋力、そして運動のフォームを改善することで、お子さんが安心してスポーツを続けられる身体づくりを目指します。

焦らず、お子さんの成長を待つことが大切

シーバー病は、成長期の骨の構造が原因で起こるため、基本的には成長が終われば自然と治癒することがほとんどです。しかし、それまでの間、痛みを我慢させたり、不適切な対処を続けたりすると、痛みが長引いたり、歩き方や姿勢に悪影響が出たりする可能性があります。

大切なのは、お子さんの痛みに寄り添い、焦らずに適切な治療とケアを続けることです。もし、お子さんのかかとの痛みでお悩みでしたら、一人で抱え込まず、まずはあおと整形外科クリニックにご相談ください。お子さんの健やかな成長を、専門医と理学療法士が全力でサポートいたします。

FAQ

Q1:シーバー病は「成長痛」とは違うのですか?

A1:一般的な「成長痛」は、夜間に足の痛みを訴えることが多く、痛みがある場所が一定せず、日中には痛みが消えることが多いのが特徴です。一方、シーバー病は、かかとの特定の場所(踵骨骨端線部)に痛みが集中し、運動や活動によって痛みが悪化するのが特徴です。シーバー病は成長期のスポーツ障害の一種と捉えるべき疾患で、適切な治療が必要です。

Q2:シーバー病はどれくらいの期間で治りますか?

A2:症状の程度や個人差はありますが、多くの場合、適切な治療と安静期間を設けることで、痛みが数週間から数ヶ月で改善に向かいます。完全に痛みがなくなり、成長軟骨が成熟するまでには数ヶ月から1年程度かかることもあります。お子さんの成長が終わる頃には自然に治癒することがほとんどですが、それまでの間、痛みをコントロールしながら、根気強くケアを続けることが大切です。

Q3:シーバー病と診断されても、スポーツを続けても大丈夫ですか?

A3:痛みが強い間は、痛みの原因となっている運動(特にランニングやジャンプ)を控えることが非常に重要です。無理をして運動を続けると、炎症が悪化し、治癒が遅れる可能性があります。痛みが和らいでからは、徐々に運動を再開していきますが、練習量や強度、そして運動フォームに注意が必要です。当クリニックでは、お子さんの状態に合わせて、無理なくスポーツを続けられるようアドバイスを行います。

Q4:自宅でできるシーバー病のケアはありますか?

A4:はい、いくつかあります。まず、運動後や痛む時にかかとを冷やす「アイシング」が有効です。次に、ふくらはぎの筋肉やアキレス腱、足の裏の柔軟性を高める「ストレッチ」をこまめに行いましょう。また、クッション性の高い靴を選んだり、かかとを保護するインソールを使用したりすることも大切です。具体的なストレッチ方法やケア用品については、診察時に理学療法士が詳しくお伝えします。

Q5:シーバー病は大人になってから後遺症が残ることはありますか?

A5:シーバー病は、成長期に起こる一時的な炎症であり、骨の成長が完了し、骨端線が閉じるとともに自然に治癒するため、大人になってから後遺症が残ることはほとんどありません。ただし、適切な治療やケアを怠り、痛みを我慢し続けた場合、一時的にかかとの骨が変形したり、痛みが長引いたりすることはありえます。早期に専門医に相談し、適切な対処をすることが大切です。

📚 参考文献

  1. ▪️踵骨骨端症(シーバー病) 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/calcaneal_apophysitis.html
  2. ▪️シーバー病(踵骨骨端症)とは? | 治療法・原因・症状を解説 – リペアセルクリニック
    https://fuelcells.org/topics/59389/
  3. ▪️シーバー病(踵骨骨端症) – 公益財団法人日本学校保健会
    https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_H28/html5.html#page=38
  4. 📚監修者情報

監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)

2025.08.07

骨折後のリハビリで大切なこと:痛みからの回復、そして元通りの生活へ

骨折は、予期せぬ事故や転倒、スポーツ中の怪我など、様々な状況で起こりうる身近な怪我の一つです。骨折すると、ギプスなどで固定したり、場合によっては手術を受けたりして、骨がくっつくのを待つ期間が必要です。しかし、骨がくっついたからといって、それで治療が終わりではありません。怪我をする前と同じように身体を動かせるようになるためには、「リハビリテーション」が非常に大切になります。

もし、あなたが骨折後の身体の動かしにくさ、痛み、不安を感じているなら、私たち整形外科があなたの力になれるかもしれません。あおと整形外科クリニックでは、患者さん一人ひとりの状態に合わせた丁寧なリハビリテーションを通じて、痛みからの回復、そして社会生活やスポーツへの安全な復帰を全力でサポートいたします。

なぜ骨折後のリハビリが大切なのか?

「骨がくっつけばそれで治った」と思われがちですが、骨折後の患部は、長期間の固定や安静によって様々な影響を受けています。

  • ▪️関節の硬さ(関節拘縮)
    ギプスなどで固定されている間、関節を動かせないため、関節を包む袋や周囲の組織が硬くなり、関節の動きが悪くなります。

  • ▪️筋力の低下
    使わない筋肉は衰えます。固定期間中に患部だけでなく、全身の筋力も低下することがあります。

  • ▪️むくみや血行不良
    固定や安静によって血流が悪くなり、むくみが生じたり、回復が遅れたりすることがあります。
  • ▪️バランス能力の低下
    患部の痛みや動かせない期間が長引くと、身体全体のバランス感覚が鈍ることがあります。

  • ▪️再受傷のリスク
    筋力やバランス能力が十分に回復しないまま日常生活に戻ると、再び転倒したり、別の場所を痛めたりするリスクが高まります。

  • ▪️精神的な不安
    痛みが続くことや、元のように動かせないことへの不安、再骨折への恐怖心など、精神的なサポートも必要になることがあります。

これらの問題を解決し、骨折をする前の生活を取り戻すために、そして、より安全で質の高い生活を送るために、計画的なリハビリテーションが不可欠なのです。

▪️骨折後のリハビリテーションのステップ

骨折後のリハビリテーションは、骨が治っていく過程と、患者さんの状態に合わせて段階的に進められます。あおと整形外科クリニックでは、国家資格を持つ理学療法士が、医師の指示のもと、一人ひとりの骨折の部位、重症度、年齢、生活習慣などを考慮したオーダーメイドのリハビリプログラムを作成・実施します。

1. 固定期間中のリハビリ(骨癒合促進と合併症予防)

骨折直後から骨が安定するまでの「固定期間」も、実はリハビリの重要な始まりです。

  • ▪️患部以外のリハビリ
    ギプスで固定されている間も、固定されていない手足や体幹の運動は積極的に行います。これにより、全身の筋力低下を防ぎ、バランス能力を維持します。

  • ▪️むくみの軽減
    患部の挙上や、固定されていない指や足首を動かすことで、血行を促進し、むくみを軽減します。

  • ▪️等尺性運動
    ギプスの中で、筋肉に力を入れる・緩めるを繰り返す等尺性運動を行うことで、固定された部分の筋力低下を最小限に抑えます。

この段階では、骨折部への負担を避けることが最優先であり、無理に動かさないよう細心の注意を払います。

2. 固定除去後のリハビリ(関節可動域・筋力の回復)

骨が十分に安定し、ギプスなどが外れた段階から、本格的なリハビリが始まります。この時期は、固まった関節を柔らかくし、低下した筋力を取り戻すことが主な目標です。

  • ▪️関節可動域訓練(ROM訓練)
    固まってしまった関節を、理学療法士が手を使ってゆっくりと動かしたり、患者様ご自身で自動的に動かしたりすることで、徐々に関節の動きを回復させていきます。痛みを伴うこともありますが、痛みの程度を見ながら無理なく進めることが重要です。

  • ▪️筋力トレーニング
    低下した筋力を回復させるために、段階的に筋力トレーニングを行います。最初は軽い負荷から始め、徐々に負荷を増やしていきます。チューブや重りを使った運動、自分の体重を利用した運動など、様々な方法があります。

  • ▪️物理療法
    温熱療法、電気治療(干渉波治療器など)、超音波治療器、ウォーターベッドなどの物理療法機器を活用し、血行促進、痛みの軽減、組織の柔軟性の向上を図ります。あおと整形外科クリニックでも、これらの機器を充実させ、患者さんの痛みに応じた治療を提供しています。

  • ▪️ハイドロリリース(筋膜リリース)
    特に、骨折後の長期間の安静によって周囲の筋肉や腱、筋膜が硬くなったり、癒着したりすることがあります。当クリニックでは、超音波エコーガイド下で、硬くなった筋膜や腱の癒着を剥がす「ハイドロリリース」を行うことで、より効果的に関節の動きを改善し、痛みを軽減する場合があります。

3. 日常生活・社会復帰に向けたリハビリ(バランス・機能回復)

関節の動きや筋力が回復してきたら、実際の日常生活動作(ADL: Activities of Daily Living)に必要な動作能力を取り戻すためのリハビリへと移行します。

  • ▪️バランス訓練
    片足立ち、不安定な場所での歩行練習など、身体のバランス感覚を養う訓練を行います。特に下肢の骨折の場合、転倒予防のために重要です。

  • ▪️歩行訓練
    装具の調整や、正しい歩行フォームの習得を目指します。階段の上り下り、坂道の歩行など、具体的な場面を想定した練習も行います。

  • ▪️協調性・巧緻性訓練
    手や指の骨折の場合、細かい作業や、両手を使った動作の練習を行います。

  • ▪️生活指導
    自宅での自主トレーニングの方法、安全な生活環境の整え方、再骨折予防のための注意点など、日常生活におけるアドバイスを行います。

4. スポーツ・趣味への復帰に向けたリハビリ(高レベルな機能回復と予防)

スポーツや特定の趣味への復帰を希望される方には、さらに専門的なリハビリプログラムを作成します。

  • ▪️スポーツ動作に特化した訓練
    ランニング、ジャンプ、方向転換など、実際のスポーツ動作に必要な筋力、持久力、俊敏性を高める訓練を行います。

  • ▪️フォーム指導
    怪我をする前のフォームの問題点を見直し、負担の少ない効率的なフォームの習得を目指します。

  • ▪️再発予防
    再骨折や他の部位の怪我を防ぐためのトレーニング、コンディショニング方法を指導します。

あおと整形外科クリニックでは、患者様が目標とするレベルまで安全に復帰できるよう、日本整形外科学会専門医と理学療法士が密に連携し、患者様一人ひとりの「もっと動きたい」という気持ちを大切にしながら、きめ細やかなサポートを提供しています。

リハビリを成功させるための大切なポイント

骨折後のリハビリを成功させるためには、患者さんご自身の「頑張り」と、医療者との「協力」が不可欠です。

  • ▪️痛みとのつきあい方
    リハビリ中に多少の痛みを感じることはありますが、無理は禁物です。痛みが強すぎる場合は、すぐに理学療法士や医師に伝えましょう。痛みを我慢しすぎると、かえって回復を遅らせたり、新たな問題を引き起こしたりする可能性があります。

  • ▪️継続すること
    リハビリは一朝一夕で効果が出るものではありません。根気強く、継続して取り組むことが大切です。

  • ▪️積極的な参加
    ただ指示されたメニューをこなすだけでなく、自分の身体の状態を理解し、疑問点があれば積極的に質問しましょう。自宅での自主トレーニングも、回復を早める上で非常に重要です。

  • ▪️医師・理学療法士との連携
    リハビリの進捗や身体の状態、不安なことなど、定期的に医療スタッフと共有し、相談しましょう。チーム医療で患者様の回復を支えます。

骨折はつらい経験ですが、適切なリハビリテーションを受けることで、多くの患者さんが元の生活、そしてスポーツや趣味を再び楽しめるようになります。不安や疑問があれば、いつでもあおと整形外科クリニックにご相談ください。私たちは、あなたの「治りたい」という気持ちに寄り添い、全力でサポートいたします。

FAQ

Q1:骨折後、いつからリハビリを始められますか?

A:骨折の部位や重症度によりますが、多くの場合、骨折直後からリハビリは始まります。ギプスなどで固定している期間も、患部以外の関節を動かしたり、むくみを防いだりするリハビリを行います。ギプスが外れた後は、骨のつき具合を確認しながら、医師の指示のもと、本格的なリハビリへと移行します。早期に始めるほど、関節が固まるのを防ぎ、回復が早まる傾向にあります。

Q2:リハビリ中に痛みがあっても続けても大丈夫ですか?

A:リハビリ中に多少の痛みや違和感を感じることはありますが、強い痛みや鋭い痛みが続く場合は、無理をせず理学療法士や医師に伝えましょう。骨折した部分に過度な負担がかかっている可能性や、他の問題がある可能性も考えられます。痛みを我慢しすぎると、かえって回復を妨げたり、新たな怪我につながったりすることがあります。

Q3:自宅でできるリハビリはありますか?

A:はい、理学療法士が指導する自主トレーニングは、リハビリの進行に非常に重要です。病院でのリハビリだけでなく、ご自宅でも継続して行うことで、回復を早められます。具体的な内容は骨折の部位や状態によって異なりますが、ストレッチや軽い筋力トレーニングなどが含まれることが多いです。必ず、医師や理学療法士の指示に従って安全に行いましょう。

Q4:リハビリはどのくらいの期間続ける必要がありますか?

A:リハビリの期間は、骨折の部位、重症度、年齢、元の生活習慣、目標(日常生活への復帰か、スポーツ復帰かなど)によって大きく異なります。数週間で基本的な動きが回復する方もいれば、数ヶ月から半年、あるいはそれ以上の期間を要することもあります。焦らず、医師や理学療法士と相談しながら、目標を共有し、段階的に進めていくことが大切です。

Q5:骨折後に足首や膝の関節が硬くなってしまいました。どうしたら良いですか?

A:骨折後の長期の固定や安静によって、関節が硬くなる「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」はよく見られる合併症です。このような場合、理学療法士が関節を柔らかくするストレッチやマッサージ、物理療法などを組み合わせた治療を行います。当クリニックでは、超音波エコーガイド下でのハイドロリリースなども検討し、関節周囲の筋肉や筋膜の癒着を剥がすことで、関節の動きの改善を目指します。早めに専門家にご相談ください。

📚 参考文献

  1. ▪️骨折のリハビリは何をするの?早く治すために大切なことは? | イシコメ
    https://ishicome.jp/column/rehabilitation-for-fracture/
  2. ▪️骨折後のリハビリについて解説 | 山田整形外科
    https://yamada-seikeigeka.jp/column/231124/
  3. ▪️大腿骨頸部骨折後のリハビリテーションの重要性とは? | 医療法人社団日翔会
    https://www.nisshokai.jp/column/rehabilitation/femoral-neck-fracture/

🔖 監修者情報

監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)

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