手首の腱鞘炎(ドケルバン病)の治療:痛みから解放され、快適な日常へ
「親指を動かすと手首が痛い」「タオルを絞るのがつらい」「赤ちゃんを抱っこすると激痛が走る」――もし、あなたがこのような症状に悩まされているなら、それは「手首の腱鞘炎(けんしょうえん)」、特に「ドケルバン病」かもしれません。
ドケルバン病は、手首の親指側にある腱と、その腱を包む「腱鞘(けんしょう)」というトンネルのような組織に炎症が起きることで発症します。日常生活で手や指を酷使する方に多く見られ、特に女性に多い傾向があります。
もし、この手首の痛みで日常生活に支障が出ている、仕事や育児に集中できないと感じているなら、私たち整形外科があなたの力になれるかもしれません。あおと整形外科クリニックでは、患者様一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた丁寧な診断と治療を通じて、痛みからの解放、そして快適な日常を取り戻すサポートをいたします。
ドケルバン病とは?なぜ手首が痛むのか?
ドケルバン病は、正式には「狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)」の一種で、手首の親指側に位置する2つの腱(短母指伸筋腱と長母指外転筋腱)と、それらを覆う腱鞘に炎症が生じる病気です。
ドケルバン病が起こるメカニズム
私たちの手や指は、腱という紐のような組織が筋肉の力を骨に伝え、関節を動かすことで機能しています。この腱は、スムーズに動くように「腱鞘」というトンネル状の組織の中を通っています。腱鞘は、腱が骨から浮き上がらないように押さえつけ、摩擦を減らす役割をしています。
しかし、手首や親指を使いすぎると、この腱と腱鞘の間で摩擦が生じ、炎症が起こります。炎症が続くと、腱鞘が厚くなったり、腱自体が腫れたりして、腱が腱鞘の中をスムーズに滑ることができなくなります。その結果、動かすたびに引っかかりや痛みが生じるようになるのです。
特に、ドケルバン病では、手首の親指側にある「第1背側コンパートメント」という狭い腱鞘の中で炎症が起こりやすく、この部位に特有の痛みを引き起こします。
ドケルバン病になりやすい人
ドケルバン病は、以下のような特徴を持つ方に多く見られます。
- ◾️女性
- 特に妊娠中、出産後、授乳期の女性や更年期の女性に多く発症します。これは、ホルモンバランスの変化が腱鞘の炎症に関与すると考えられているためです。
- ◾️手や指をよく使う仕事や趣味を持つ人
- パソコン作業(マウスやキーボードの操作)
- スマートフォンの長時間使用(特に親指でのフリック入力など)
- 美容師、調理師、医療従事者など、手先を使う職業
- テニス、ゴルフ、バドミントンなど、手首や親指を酷使するスポーツ
- ◾️育児中の親
- 赤ちゃんを抱っこする、授乳する、おむつを替えるなど、親指を広げたり手首をひねったりする動作を繰り返すことで、手首に大きな負担がかかります。
- ◾️特定の病気を持つ人
- 関節リウマチや糖尿病のある方も、腱鞘炎を発症しやすい傾向があります。
ドケルバン病の主な症状
ドケルバン病の症状は、手首の親指側の痛みが特徴的です。
- ◾️手首の親指側の痛み
- 特に親指を広げたり、動かしたりする際に、手首の親指の付け根あたりに鋭い痛みを感じます。
- ◾️腫れやしこり
- 痛みのある部分に、腫れや、触ると硬いしこりのようなものが感じられることがあります。
- ◾️動作時の痛み
- 物をつかむ、握る、持ち上げる動作
- タオルを絞る動作
- ドアノブを回す動作
- 赤ちゃんを抱っこする動作
- スマートフォンの操作
- キーボードやマウスの操作
- ◾️しびれや放散痛
- 症状が進行すると、痛みが親指や前腕に広がったり、しびれを感じたりすることもあります。
これらの症状は、日常生活の様々な場面で不便や苦痛をもたらし、QOL(生活の質)を著しく低下させる可能性があります。痛みを我慢せず、早めに専門医に相談することが大切です。
ドケルバン病の診断と検査
あおと整形外科クリニックでは、ドケルバン病の診断のため、まず患者様から症状について詳しくお話を伺います。いつから、どのような時に、どのくらいの痛みがあるのか、仕事や趣味、育児で手を使う頻度などを確認します。
次に、手首の視診と触診を行い、痛みのある部位の腫れや圧痛(押した時の痛み)の有無を確認します。 ドケルバン病の診断に特徴的な検査として、「フィンケルシュタインテスト」があります。
フィンケルシュタインテスト
- 親指を他の指で包み込むようにして、軽く握りこぶしを作ります。
- そのまま手首を小指側にゆっくりと曲げます。
この時に、手首の親指側に強い痛みが生じれば、ドケルバン病の可能性が高いと判断されます。
また、必要に応じてX線(レントゲン)検査を行い、骨の異常や他の病気(関節炎など)がないかを確認します。腱鞘や腱自体の状態を詳しく見るために、超音波(エコー)検査を行うこともあります。エコー検査は、リアルタイムで腱鞘の肥厚や腱の炎症の有無を確認でき、診断の補助や治療方針の決定に役立ちます。
これらの丁寧な診察と検査を通じて、ドケルバン病の状態を正確に診断し、患者様一人ひとりに最適な治療計画を検討していきます。
ドケルバン病の治療法:痛みを和らげ、再発を防ぐ
ドケルバン病の治療は、症状の程度や原因、患者様のライフスタイルに合わせて、様々な方法を組み合わせて行われます。基本的には手術をしない「保存療法」が中心となりますが、症状が改善しない場合には「手術療法」も選択肢となります。
1. 保存療法:まずは手首を休ませることから
① 安静と活動制限
最も基本的な治療法であり、最も重要なステップです。痛みの原因となっている手首や親指の使いすぎを避け、患部を安静に保つことが大切です。
- ◾️作業内容の見直し
- パソコン作業の姿勢やマウスの持ち方、スマートフォンの操作方法などを見直します。
- ◾️育児中の工夫
- 授乳クッションや抱っこ紐を工夫し、手首への負担を減らします。
- ◾️スポーツ活動の調整
- 痛みが強い間は、原因となるスポーツ活動を一時的に休止したり、練習量を減らしたりします。
② 装具やサポーターによる固定
手首や親指の動きを制限し、腱鞘への負担を軽減するために、装具(シーネ)やサポーターを使用します。これにより、患部を安静に保ち、炎症の悪化を防ぐことができます。
③ 薬物療法
- ◾️内服薬
- 炎症を抑え、痛みを和らげるために、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を処方することがあります。
- ◾️外用薬
- 湿布や塗り薬(消炎鎮痛剤の軟膏やゲル)を患部に貼ったり塗ったりして、局所の炎症を抑えます。
④ 注射療法(ステロイド注射)
保存療法の中でも、特に効果が期待できるのが、腱鞘内に直接ステロイド剤と局所麻酔薬を注入する治療です。ステロイドには強力な抗炎症作用があり、腱鞘の炎症を効率的に抑えることができます。 多くの場合、1回の注射で数週間から数ヶ月にわたって痛みが軽減し、そのまま治癒に至ることも少なくありません。ただし、ステロイド注射は頻繁に行うと、腱が脆くなるなどの副作用のリスクがあるため、医師の判断のもと、適切な間隔と回数で行われます。あおと整形外科クリニックでは、痛みの状態を詳しく診察し、患者様と相談しながら、注射療法の適応を慎重に判断いたします。
⑤ リハビリテーション(運動療法)
痛みが落ち着いてきたら、再発予防と機能改善のためにリハビリテーションを行います。国家資格を持つ理学療法士が、患者様一人ひとりの状態に合わせた運動療法を指導します。
- ◾️ストレッチ
- 硬くなった前腕の筋肉や手首、親指のストレッチを行い、柔軟性を高めます。
- ◾️筋力トレーニング
- 手首や指の安定性を高めるための軽い筋力トレーニングを行います。
- ◾️動作指導
- 日常生活や仕事、スポーツにおける手首や親指の負担を減らすための正しい体の使い方や動作の工夫を指導します。
- ◾️ハイドロリリース(筋膜リリース)
- 腱鞘炎の周囲の筋肉や筋膜が硬くなっている場合、超音波エコーガイド下でハイドロリリースを行うことで、筋肉の滑走性を改善し、痛みの軽減や可動域の改善を図る場合があります。
これらのリハビリテーションは、単に痛みを和らげるだけでなく、根本的な原因にアプローチし、再発しにくい身体づくりを目指します。
⑥ 物理療法
血行を促進し、炎症を抑え、痛みを和らげるために、様々な物理療法を行います。あおと整形外科クリニックでは、運動器リハビリの補助として機器を用いた物理療法を提供しています。
2. 手術療法:保存療法で改善しない場合
保存療法を数ヶ月続けても症状が改善しない場合や、痛みが繰り返し再発して日常生活に大きな支障をきたす場合には、手術療法が検討されます。
手術は、狭くなった腱鞘を切開し、腱がスムーズに動くようにするものです。通常、局所麻酔で行われ、手術時間は比較的短時間で済みます。最近では、超音波エコーガイド下で小さな切開から行う低侵襲な手術方法も行われることがあります。
手術後は、しばらく安静期間を設けた後、リハビリテーションを行い、手首の機能回復を目指します。手術により、多くの場合、痛みが劇的に改善し、日常生活や仕事、スポーツへの復帰が可能になります。
ドケルバン病の予防と日常生活での注意点
ドケルバン病を予防し、再発を防ぐためには、日常生活での工夫が非常に重要です。
- ◾️手首や親指の使いすぎに注意
- 特定の動作を長時間繰り返さないよう、こまめに休憩を取りましょう。
- ◾️正しい姿勢と動作
- パソコン作業では、手首が不自然に曲がらないよう、キーボードやマウスの位置を調整しましょう。
- ◾️適切な道具の使用
- クッション性のあるマウスパッドや、手首をサポートするサポーターなどを活用するのも良いでしょう。
- ◾️ストレッチの習慣化
- 日頃からふくらはぎや前腕、手首のストレッチを行い、筋肉の柔軟性を保ちましょう。
- ◾️育児中の工夫
- 赤ちゃんを抱っこする際は、手首だけでなく、腕全体や体幹を使って抱えるように意識しましょう。授乳クッションや抱っこ紐を積極的に利用することも大切です。
- ◾️痛みを我慢しない
- 少しでも痛みを感じたら、無理をせず、早めに医療機関を受診しましょう。早期に治療を開始するほど、回復も早まります。
ドケルバン病は、つらい痛みですが、適切な診断と治療、そして日頃のケアによって、多くの方が痛みから解放され、快適な日常を取り戻すことができます。手首の痛みでお悩みでしたら、一人で抱え込まず、あおと整形外科クリニックにご相談ください。私たちは、あなたの痛みに寄り添い、最適な治療とサポートを提供いたします。
FAQ
Q1:ドケルバン病は自然に治りますか?
A1:軽症の場合や、原因となる動作を完全にやめられる場合は、自然に治ることもありますが、多くの場合、痛みが慢性化しやすい傾向があります。特に、育児中の方や手を使う仕事の方は、痛みの原因となる動作を完全に避けることが難しいため、放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。痛みが続く場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。
Q2:ドケルバン病の注射は痛いですか?何回まで打てますか?
A2:注射の際には、局所麻酔薬も一緒に注入するため、一般的には「歯医者さんの麻酔注射くらいの痛み」と表現されることが多いです。注射後、一時的に痛みが強くなることもありますが、通常は数日以内に和らぎます。ステロイド注射の回数に明確な制限はありませんが、腱が弱くなるなどの副作用のリスクを考慮し、医師が慎重に判断します。通常は、数ヶ月の間隔を空けて、数回までが目安とされています。
Q3:ドケルバン病の治療で、サポーターやテーピングは効果がありますか?
A3:はい、サポーターやテーピングは、手首や親指の動きを制限し、腱鞘への負担を軽減する効果が期待できます。特に、痛みが強い急性期や、どうしても手を使わなければならない場合に有効です。ただし、長期間固定しすぎると、かえって手首が硬くなることもあるため、医師や理学療法士の指導のもと、適切に使用することが大切です。
Q4:ドケルバン病の予防のために、日常生活でできることはありますか?
A4:手首や親指の使いすぎを避け、こまめに休憩を取ることが重要です。パソコン作業では、手首が不自然に曲がらないよう、キーボードやマウスの位置を調整しましょう。育児中の方は、授乳クッションや抱っこ紐を工夫し、手首への負担を減らすことが大切です。また、日頃から手首や前腕のストレッチを行い、筋肉の柔軟性を保つことも予防に繋がります。
Q5:ドケルバン病と診断されたら、手術が必要になりますか?
A5:ドケルバン病の治療は、まず安静や薬物療法、装具による固定、注射療法、リハビリテーションなどの「保存療法」から始めます。これらの保存療法で多くの方が改善します。しかし、数ヶ月間保存療法を続けても痛みが改善しない場合や、痛みが繰り返し再発して日常生活に大きな支障をきたす場合には、手術療法が検討されます。手術は、狭くなった腱鞘を切開して腱への圧迫を取り除くもので、多くの場合、良好な結果が得られます。
📚 参考文献
- ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/de_quervain_disease.html
- 腱鞘炎(ドケルバン病) | 慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A – オクノクリニック
- https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/kensyouen.html
- 腱鞘炎の注射治療における痛み・効果・副作用を医師が解説 | リペアセルクリニック東京院
- https://fuelcells.org/topics/53021/
🔖 監修者情報
監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)
子どものかかとの痛み(シーバー病)とは:成長期の足を守るために
お子さんが「かかとが痛い」と訴えたり、運動後に足をかばうように歩いたりしていませんか?特に、活発にスポーツをしているお子さんの場合、そのかかとの痛みは「シーバー病」かもしれません。シーバー病は、成長期の子ども特有の足のトラブルで、適切なケアを行うことで痛みを和らげ、安心してスポーツや日常生活を続けられるようになります。
もし、お子さんのかかとの痛みでお悩みでしたら、私たち整形外科がその不安に寄り添い、サポートいたします。あおと整形外科クリニックでは、お子さんの成長と活動を妨げないよう、丁寧な診断と一人ひとりに合わせた治療計画で、健やかな成長を応援しています。
シーバー病(踵骨骨端症)とは?なぜ成長期の子どもに多いの?
シーバー病は、正式には「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」と呼ばれ、主に8歳から15歳くらいの成長期にある子どもに多く見られるかかとの痛みです。特に活発な男の子に多い傾向があります。
なぜこの時期に発症しやすいのでしょうか?それは、子どもの骨が成長する過程に秘密があります。 大人の骨は一体ですが、子どもの骨にはまだ「骨端線(こったんせん)」、または「成長軟骨板」と呼ばれる柔らかい部分があります。かかとの骨(踵骨)にもこの骨端線が存在し、ここから骨が伸びて成長していきます。
しかし、この成長軟骨板は、まだ成熟した骨のように強くありません。この時期に、ランニングやジャンプなど、かかとに繰り返し強い衝撃や負担がかかると、アキレス腱や足の裏の腱膜(足底腱膜)が骨端線を引っ張り、小さな損傷や炎症を引き起こしてしまうのです。これがシーバー病のメカニズムです。例えるなら、まだ柔らかい成長途中の骨に、強い力が集中してかかり続けることで、痛みが生じる状態と言えるでしょう。
シーバー病の主な原因
シーバー病は、単一の原因で発症することは少なく、いくつかの要因が組み合わさって発症することがほとんどです。
- ◾️過度な運動量
サッカー、バスケットボール、陸上競技、バレーボールなど、走る・跳ぶ動作が多いスポーツをしている子どもに特に多く見られます。練習量や試合が多いと、かかとへの負担が蓄積されやすくなります。 - ◾️アキレス腱やふくらはぎの筋肉の柔軟性不足
- 成長期には、骨が急激に伸びる一方で、筋肉や腱の成長が追いつかないことがあります。特にふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)やアキレス腱が硬いと、かかとの骨端線への牽引力が強くなり、負担が増加します。
- ◾️足の構造的な問題
- ・扁平足(へんぺいそく)
- 足の裏のアーチが低く、地面に接する面積が広い状態です。衝撃吸収能力が低下し、かかとへの負担が増えやすくなります。
- ・ハイアーチ(甲高):逆にアーチが高すぎる場合も、衝撃吸収がうまくいかず、特定の部位に負担が集中することがあります。
- ・不適切な靴
- クッション性が低い靴、かかとのホールドが不安定な靴、サイズが合わない靴なども、かかとへの衝撃を吸収しきれず、症状を悪化させる原因となります。
- ・急激な体重増加
- 体重が増えると、当然ながら足にかかる負担も大きくなります。
シーバー病の主な症状
シーバー病の代表的な症状は、かかとや足の裏の痛みです。
- ◾️運動時や運動後の痛み
- 走ったり、跳んだりした時、特に運動後に、かかとの後ろ側や底の部分に痛みを感じます。
- ◾️歩き始めの痛み
- 朝起きて最初の一歩や、長く座っていた後に立ち上がった時に、かかとが痛むことがあります。動き出すと痛みが和らぐこともありますが、これは足底腱膜炎と共通する特徴でもあります。
- ◾️かかとを押すと痛い(圧痛)
- かかとの後ろや底の部分、特にアキレス腱がかかとの骨に付着しているあたりを押すと強い痛みを感じます。
- ◾️つま先歩きになる
- 痛みを避けるために、無意識のうちにかかとを地面につけず、つま先で歩くようになるお子さんもいます。
- ◾️かかとの軽い腫れ
- 痛みのある部位に、わずかな腫れが見られることがあります。
これらの症状は、お子さんの運動能力を低下させるだけでなく、日常生活にも影響を与えることがあります。痛みを我慢させたり、「成長痛だから仕方ない」と放置したりせずに、早めに専門医に相談することが大切です。
シーバー病の診断と検査
あおと整形外科クリニックでは、お子さんのかかとの痛みに対し、日本整形外科学会専門医である院長が丁寧に診察を行います。
まず、お子さんや保護者の方から、いつから、どのような時に、どのくらい痛むのか、どのようなスポーツをしているのか、運動量や頻度はどのくらいかなどを詳しくお伺いします。次に、足の視診と触診を行い、かかとのどの部分に痛みがあるのか、腫れや熱感の有無、足のアーチの形、足首やふくらはぎの柔軟性などを細かく確認します。
診断の確定には、画像検査が重要です。
- ◾️X線(レントゲン)検査
- かかとの骨端線(成長軟骨板)の状態や、骨の異常がないかを確認します。シーバー病の場合、骨端線が不規則に見えたり、骨が分節しているように見えたりすることがあります。また、他の骨の病気や骨折の可能性を除外するためにも重要です。
- ◾️超音波(エコー)検査
- 必要に応じて、超音波エコー検査を行うこともあります。エコー検査は、骨端線周辺の炎症やむくみ、アキレス腱の状態などをリアルタイムで詳しく観察でき、診断の補助として役立ちます。
これらの丁寧な診察と検査を通じて、シーバー病の状態を正確に診断し、お子さん一人ひとりに最適な治療方針を検討していきます。
シーバー病の対処法・治療法
シーバー病の治療は、基本的に手術を必要としない「保存療法」が中心となります。お子さんの痛みを和らげ、安全に活動を再開できるよう、様々な方法を組み合わせて行います。
1. 安静と活動制限:最も重要なステップ
痛みの原因となっている運動を一時的に制限し、かかとへの負担を減らすことが何よりも大切です。痛みが強い間は、ランニングやジャンプを伴うスポーツ活動を控え、安静を保つようにします。完全に運動を中止する必要がない場合でも、練習量や強度を調整するよう指導します。
2. アイシング:炎症を抑える
運動後や痛みが強い時には、氷嚢や保冷剤をタオルで包んで、かかとの痛む部分に15~20分程度当てて冷やします。これにより、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。
3. ストレッチとマッサージ:柔軟性の向上
硬くなったふくらはぎの筋肉やアキレス腱、足底腱膜の柔軟性を高めるストレッチは、かかとへの負担を軽減するために非常に重要です。
- ふくらはぎのストレッチ:壁に手をつき、痛い方の足を後ろに引いて、かかとを地面につけたまま、ふくらはぎをゆっくり伸ばします。
- 足底腱膜のストレッチ:ゴルフボールやテニスボールを足の裏で転がしてマッサージしたり、つま先を手で持って足の裏を伸ばしたりします。 理学療法士が、お子さんの身体の状態に合わせた効果的なストレッチやマッサージの方法を丁寧に指導します。
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4. 靴の見直しとインソールの使用
クッション性が高く、かかとをしっかりと包み込み、安定性のあるスポーツシューズや普段履きの靴を選ぶことが大切です。 また、かかとの負担を軽減するために、「ヒールカップ」や「かかとを高くするインソール(足底板)」を使用することが有効です。これらは、かかとへの衝撃を吸収したり、アキレス腱の牽引力を和らげたりする効果が期待できます。あおと整形外科クリニックでは、お子さんの足の形や症状に合わせた靴選びやインソールの活用について具体的なアドバイスを行っています。
5. 理学療法・リハビリテーション
国家資格を持つ理学療法士が、お子さんの身体の使い方や動きの癖を評価し、適切なリハビリテーションメニューを作成します。
- ◾️運動療法
- 足首や足の指の筋力強化、バランス能力の改善、正しい歩き方や走り方の指導などを行います。
- ◾️姿勢の改善
- 姿勢の偏りや、体幹の不安定さが原因となることもあるため、全身のバランスを整える指導も行います。
6. 物理療法
痛みの軽減や組織の回復を促すために、運動器リハビリの補助として物理療法を行います。血行促進、炎症の抑制、痛みの緩和を図ります。
シーバー病の治療は、痛みがなくなるだけでなく、再発を防ぐためのケアが重要です。リハビリテーションを通じて、柔軟性、筋力、そして運動のフォームを改善することで、お子さんが安心してスポーツを続けられる身体づくりを目指します。
焦らず、お子さんの成長を待つことが大切
シーバー病は、成長期の骨の構造が原因で起こるため、基本的には成長が終われば自然と治癒することがほとんどです。しかし、それまでの間、痛みを我慢させたり、不適切な対処を続けたりすると、痛みが長引いたり、歩き方や姿勢に悪影響が出たりする可能性があります。
大切なのは、お子さんの痛みに寄り添い、焦らずに適切な治療とケアを続けることです。もし、お子さんのかかとの痛みでお悩みでしたら、一人で抱え込まず、まずはあおと整形外科クリニックにご相談ください。お子さんの健やかな成長を、専門医と理学療法士が全力でサポートいたします。
FAQ
Q1:シーバー病は「成長痛」とは違うのですか?
A1:一般的な「成長痛」は、夜間に足の痛みを訴えることが多く、痛みがある場所が一定せず、日中には痛みが消えることが多いのが特徴です。一方、シーバー病は、かかとの特定の場所(踵骨骨端線部)に痛みが集中し、運動や活動によって痛みが悪化するのが特徴です。シーバー病は成長期のスポーツ障害の一種と捉えるべき疾患で、適切な治療が必要です。
Q2:シーバー病はどれくらいの期間で治りますか?
A2:症状の程度や個人差はありますが、多くの場合、適切な治療と安静期間を設けることで、痛みが数週間から数ヶ月で改善に向かいます。完全に痛みがなくなり、成長軟骨が成熟するまでには数ヶ月から1年程度かかることもあります。お子さんの成長が終わる頃には自然に治癒することがほとんどですが、それまでの間、痛みをコントロールしながら、根気強くケアを続けることが大切です。
Q3:シーバー病と診断されても、スポーツを続けても大丈夫ですか?
A3:痛みが強い間は、痛みの原因となっている運動(特にランニングやジャンプ)を控えることが非常に重要です。無理をして運動を続けると、炎症が悪化し、治癒が遅れる可能性があります。痛みが和らいでからは、徐々に運動を再開していきますが、練習量や強度、そして運動フォームに注意が必要です。当クリニックでは、お子さんの状態に合わせて、無理なくスポーツを続けられるようアドバイスを行います。
Q4:自宅でできるシーバー病のケアはありますか?
A4:はい、いくつかあります。まず、運動後や痛む時にかかとを冷やす「アイシング」が有効です。次に、ふくらはぎの筋肉やアキレス腱、足の裏の柔軟性を高める「ストレッチ」をこまめに行いましょう。また、クッション性の高い靴を選んだり、かかとを保護するインソールを使用したりすることも大切です。具体的なストレッチ方法やケア用品については、診察時に理学療法士が詳しくお伝えします。
Q5:シーバー病は大人になってから後遺症が残ることはありますか?
A5:シーバー病は、成長期に起こる一時的な炎症であり、骨の成長が完了し、骨端線が閉じるとともに自然に治癒するため、大人になってから後遺症が残ることはほとんどありません。ただし、適切な治療やケアを怠り、痛みを我慢し続けた場合、一時的にかかとの骨が変形したり、痛みが長引いたりすることはありえます。早期に専門医に相談し、適切な対処をすることが大切です。
📚 参考文献
- ▪️踵骨骨端症(シーバー病) 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/calcaneal_apophysitis.html
- ▪️シーバー病(踵骨骨端症)とは? | 治療法・原因・症状を解説 – リペアセルクリニック
https://fuelcells.org/topics/59389/ - ▪️シーバー病(踵骨骨端症) – 公益財団法人日本学校保健会
https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_H28/html5.html#page=38 -
📚監修者情報
監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)
骨折後のリハビリで大切なこと:痛みからの回復、そして元通りの生活へ
骨折は、予期せぬ事故や転倒、スポーツ中の怪我など、様々な状況で起こりうる身近な怪我の一つです。骨折すると、ギプスなどで固定したり、場合によっては手術を受けたりして、骨がくっつくのを待つ期間が必要です。しかし、骨がくっついたからといって、それで治療が終わりではありません。怪我をする前と同じように身体を動かせるようになるためには、「リハビリテーション」が非常に大切になります。
もし、あなたが骨折後の身体の動かしにくさ、痛み、不安を感じているなら、私たち整形外科があなたの力になれるかもしれません。あおと整形外科クリニックでは、患者さん一人ひとりの状態に合わせた丁寧なリハビリテーションを通じて、痛みからの回復、そして社会生活やスポーツへの安全な復帰を全力でサポートいたします。
なぜ骨折後のリハビリが大切なのか?
「骨がくっつけばそれで治った」と思われがちですが、骨折後の患部は、長期間の固定や安静によって様々な影響を受けています。
- ▪️関節の硬さ(関節拘縮)
ギプスなどで固定されている間、関節を動かせないため、関節を包む袋や周囲の組織が硬くなり、関節の動きが悪くなります。 - ▪️筋力の低下
使わない筋肉は衰えます。固定期間中に患部だけでなく、全身の筋力も低下することがあります。 - ▪️むくみや血行不良
固定や安静によって血流が悪くなり、むくみが生じたり、回復が遅れたりすることがあります。 - ▪️バランス能力の低下
患部の痛みや動かせない期間が長引くと、身体全体のバランス感覚が鈍ることがあります。 - ▪️再受傷のリスク
筋力やバランス能力が十分に回復しないまま日常生活に戻ると、再び転倒したり、別の場所を痛めたりするリスクが高まります。 - ▪️精神的な不安
痛みが続くことや、元のように動かせないことへの不安、再骨折への恐怖心など、精神的なサポートも必要になることがあります。
これらの問題を解決し、骨折をする前の生活を取り戻すために、そして、より安全で質の高い生活を送るために、計画的なリハビリテーションが不可欠なのです。
▪️骨折後のリハビリテーションのステップ
骨折後のリハビリテーションは、骨が治っていく過程と、患者さんの状態に合わせて段階的に進められます。あおと整形外科クリニックでは、国家資格を持つ理学療法士が、医師の指示のもと、一人ひとりの骨折の部位、重症度、年齢、生活習慣などを考慮したオーダーメイドのリハビリプログラムを作成・実施します。
1. 固定期間中のリハビリ(骨癒合促進と合併症予防)
骨折直後から骨が安定するまでの「固定期間」も、実はリハビリの重要な始まりです。
- ▪️患部以外のリハビリ
ギプスで固定されている間も、固定されていない手足や体幹の運動は積極的に行います。これにより、全身の筋力低下を防ぎ、バランス能力を維持します。 - ▪️むくみの軽減
患部の挙上や、固定されていない指や足首を動かすことで、血行を促進し、むくみを軽減します。 - ▪️等尺性運動
ギプスの中で、筋肉に力を入れる・緩めるを繰り返す等尺性運動を行うことで、固定された部分の筋力低下を最小限に抑えます。
この段階では、骨折部への負担を避けることが最優先であり、無理に動かさないよう細心の注意を払います。
2. 固定除去後のリハビリ(関節可動域・筋力の回復)
骨が十分に安定し、ギプスなどが外れた段階から、本格的なリハビリが始まります。この時期は、固まった関節を柔らかくし、低下した筋力を取り戻すことが主な目標です。
- ▪️関節可動域訓練(ROM訓練)
固まってしまった関節を、理学療法士が手を使ってゆっくりと動かしたり、患者様ご自身で自動的に動かしたりすることで、徐々に関節の動きを回復させていきます。痛みを伴うこともありますが、痛みの程度を見ながら無理なく進めることが重要です。 - ▪️筋力トレーニング
低下した筋力を回復させるために、段階的に筋力トレーニングを行います。最初は軽い負荷から始め、徐々に負荷を増やしていきます。チューブや重りを使った運動、自分の体重を利用した運動など、様々な方法があります。 - ▪️物理療法
温熱療法、電気治療(干渉波治療器など)、超音波治療器、ウォーターベッドなどの物理療法機器を活用し、血行促進、痛みの軽減、組織の柔軟性の向上を図ります。あおと整形外科クリニックでも、これらの機器を充実させ、患者さんの痛みに応じた治療を提供しています。 - ▪️ハイドロリリース(筋膜リリース)
特に、骨折後の長期間の安静によって周囲の筋肉や腱、筋膜が硬くなったり、癒着したりすることがあります。当クリニックでは、超音波エコーガイド下で、硬くなった筋膜や腱の癒着を剥がす「ハイドロリリース」を行うことで、より効果的に関節の動きを改善し、痛みを軽減する場合があります。
3. 日常生活・社会復帰に向けたリハビリ(バランス・機能回復)
関節の動きや筋力が回復してきたら、実際の日常生活動作(ADL: Activities of Daily Living)に必要な動作能力を取り戻すためのリハビリへと移行します。
- ▪️バランス訓練
片足立ち、不安定な場所での歩行練習など、身体のバランス感覚を養う訓練を行います。特に下肢の骨折の場合、転倒予防のために重要です。 - ▪️歩行訓練
装具の調整や、正しい歩行フォームの習得を目指します。階段の上り下り、坂道の歩行など、具体的な場面を想定した練習も行います。 - ▪️協調性・巧緻性訓練
手や指の骨折の場合、細かい作業や、両手を使った動作の練習を行います。 - ▪️生活指導
自宅での自主トレーニングの方法、安全な生活環境の整え方、再骨折予防のための注意点など、日常生活におけるアドバイスを行います。
4. スポーツ・趣味への復帰に向けたリハビリ(高レベルな機能回復と予防)
スポーツや特定の趣味への復帰を希望される方には、さらに専門的なリハビリプログラムを作成します。
- ▪️スポーツ動作に特化した訓練
ランニング、ジャンプ、方向転換など、実際のスポーツ動作に必要な筋力、持久力、俊敏性を高める訓練を行います。 - ▪️フォーム指導
怪我をする前のフォームの問題点を見直し、負担の少ない効率的なフォームの習得を目指します。 - ▪️再発予防
再骨折や他の部位の怪我を防ぐためのトレーニング、コンディショニング方法を指導します。
あおと整形外科クリニックでは、患者様が目標とするレベルまで安全に復帰できるよう、日本整形外科学会専門医と理学療法士が密に連携し、患者様一人ひとりの「もっと動きたい」という気持ちを大切にしながら、きめ細やかなサポートを提供しています。
リハビリを成功させるための大切なポイント
骨折後のリハビリを成功させるためには、患者さんご自身の「頑張り」と、医療者との「協力」が不可欠です。
- ▪️痛みとのつきあい方
リハビリ中に多少の痛みを感じることはありますが、無理は禁物です。痛みが強すぎる場合は、すぐに理学療法士や医師に伝えましょう。痛みを我慢しすぎると、かえって回復を遅らせたり、新たな問題を引き起こしたりする可能性があります。 - ▪️継続すること
リハビリは一朝一夕で効果が出るものではありません。根気強く、継続して取り組むことが大切です。 - ▪️積極的な参加
ただ指示されたメニューをこなすだけでなく、自分の身体の状態を理解し、疑問点があれば積極的に質問しましょう。自宅での自主トレーニングも、回復を早める上で非常に重要です。 - ▪️医師・理学療法士との連携
リハビリの進捗や身体の状態、不安なことなど、定期的に医療スタッフと共有し、相談しましょう。チーム医療で患者様の回復を支えます。
骨折はつらい経験ですが、適切なリハビリテーションを受けることで、多くの患者さんが元の生活、そしてスポーツや趣味を再び楽しめるようになります。不安や疑問があれば、いつでもあおと整形外科クリニックにご相談ください。私たちは、あなたの「治りたい」という気持ちに寄り添い、全力でサポートいたします。
FAQ
Q1:骨折後、いつからリハビリを始められますか?
A:骨折の部位や重症度によりますが、多くの場合、骨折直後からリハビリは始まります。ギプスなどで固定している期間も、患部以外の関節を動かしたり、むくみを防いだりするリハビリを行います。ギプスが外れた後は、骨のつき具合を確認しながら、医師の指示のもと、本格的なリハビリへと移行します。早期に始めるほど、関節が固まるのを防ぎ、回復が早まる傾向にあります。
Q2:リハビリ中に痛みがあっても続けても大丈夫ですか?
A:リハビリ中に多少の痛みや違和感を感じることはありますが、強い痛みや鋭い痛みが続く場合は、無理をせず理学療法士や医師に伝えましょう。骨折した部分に過度な負担がかかっている可能性や、他の問題がある可能性も考えられます。痛みを我慢しすぎると、かえって回復を妨げたり、新たな怪我につながったりすることがあります。
Q3:自宅でできるリハビリはありますか?
A:はい、理学療法士が指導する自主トレーニングは、リハビリの進行に非常に重要です。病院でのリハビリだけでなく、ご自宅でも継続して行うことで、回復を早められます。具体的な内容は骨折の部位や状態によって異なりますが、ストレッチや軽い筋力トレーニングなどが含まれることが多いです。必ず、医師や理学療法士の指示に従って安全に行いましょう。
Q4:リハビリはどのくらいの期間続ける必要がありますか?
A:リハビリの期間は、骨折の部位、重症度、年齢、元の生活習慣、目標(日常生活への復帰か、スポーツ復帰かなど)によって大きく異なります。数週間で基本的な動きが回復する方もいれば、数ヶ月から半年、あるいはそれ以上の期間を要することもあります。焦らず、医師や理学療法士と相談しながら、目標を共有し、段階的に進めていくことが大切です。
Q5:骨折後に足首や膝の関節が硬くなってしまいました。どうしたら良いですか?
A:骨折後の長期の固定や安静によって、関節が硬くなる「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」はよく見られる合併症です。このような場合、理学療法士が関節を柔らかくするストレッチやマッサージ、物理療法などを組み合わせた治療を行います。当クリニックでは、超音波エコーガイド下でのハイドロリリースなども検討し、関節周囲の筋肉や筋膜の癒着を剥がすことで、関節の動きの改善を目指します。早めに専門家にご相談ください。
📚 参考文献
- ▪️骨折のリハビリは何をするの?早く治すために大切なことは? | イシコメ
https://ishicome.jp/column/rehabilitation-for-fracture/ - ▪️骨折後のリハビリについて解説 | 山田整形外科
https://yamada-seikeigeka.jp/column/231124/ - ▪️大腿骨頸部骨折後のリハビリテーションの重要性とは? | 医療法人社団日翔会
https://www.nisshokai.jp/column/rehabilitation/femoral-neck-fracture/
🔖 監修者情報
監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)
交通事故に遭った時、整形外科と整骨院、どちらに行けばいいの?
交通事故に遭われた際、身体に痛みや違和感があると「どこを受診すればいいんだろう?」と迷ってしまう方は少なくありません。特に、整形外科と整骨院のどちらを選ぶべきか、判断に迷うこともあるでしょう。
結論から申し上げますと、交通事故による怪我の場合、まず最初に整形外科を受診することをおすすめします。 その理由を詳しくご説明します。
交通事故後の身体の痛み、まずは整形外科へ
交通事故では、ご自身では気づかないうちに大きな衝撃を受けていることがあります。事故直後には痛みがなくても、数日経ってから首や腰、手足などに痛みやしびれが出てくるケースも少なくありません。
整形外科は、骨・関節・筋肉・神経など、運動器の専門家です。交通事故による骨折、脱臼、捻挫、打撲、むちうち(頸椎捻挫)などを診断し、適切な治療を行うことができる唯一の医療機関です。
整形外科を受診すべき理由
▪️正確な診断と適切な初期治療
整形外科では、医師が診察を行い、レントゲンやMRI、CTなどの画像検査を用いて、目に見えない骨の損傷や神経の圧迫、靭帯の損傷などを正確に診断できます。これにより、症状の原因を特定し、骨折や脱臼といった見落としてはいけない重篤な怪我がないかを確認できます。 例えば、むちうち一つをとっても、軽度の捻挫から神経症状を伴うものまで様々です。正確な診断が、その後の治療方針を決定する上で最も重要になります。 あおと整形外科クリニックでは、日本整形外科学会専門医である院長が、事故状況や症状を詳しくお伺いし、必要な検査を通じて適切な診断を行います。
▪️診断書の発行
交通事故の治療では、警察への届け出や保険会社への対応において、医師の作成する診断書が非常に重要になります。整形外科では、法的な効力を持つ診断書を作成することができます。診断書は、交通事故が原因で怪我をしたことを公的に証明するものであり、損害賠償請求を行う上で不可欠な書類です。 整骨院では診断書を発行できないため、警察に提出する人身事故の届け出や、保険会社への手続きが滞る可能性があります。
▪️専門的な治療計画
整形外科医は、診断に基づいて、薬物療法(痛み止め、湿布など)、物理療法(温熱療法、電気治療など)、装具療法(コルセット、サポーターなど)、注射療法(痛みや炎症を抑える注射など)といった様々な治療法を組み合わせ、患者様の症状に応じた治療計画を立てます。 あおと整形外科クリニックでは、患者様一人ひとりの症状や回復段階に合わせて、これらの治療法に加え、国家資格を持つ理学療法士による専門的なリハビリテーションも提供しています。
▪️保険会社との連携
整形外科は医療機関であるため、自賠責保険や任意保険といった交通事故保険の取り扱いに慣れており、保険会社との連携もスムーズに行えます。治療費の請求なども適切に対応してもらえます。
整骨院に行くのはどんな時?
では、整骨院は交通事故の怪我には向かないのでしょうか?そうではありません。整骨院は、柔道整復師という国家資格を持つ専門家が、手技による施術(マッサージ、ストレッチなど)や物理療法(電気治療など)を行う施設です。
整骨院は、以下のようなケースで利用を検討すると良いでしょう。
▪️整形外科での診断後、医師の同意がある場合
整形外科で医師による診察と診断を受け、骨折や重篤な神経損傷などがないと確認された上で、医師が「整骨院での施術も有効」と判断し、連携が取れている場合です。 特に、痛みの緩和や筋肉の柔軟性向上、身体のバランス調整など、手技によるアプローチが有効な場合に補完的な役割を果たすことがあります。
▪️より集中的な手技療法を受けたい場合
整形外科での治療と並行して、マッサージなどの手技によるアプローチをより多く取り入れたいと考える場合です。 ただし、この場合も、定期的に整形外科医の診察を受け、症状の経過を医師が把握しておくことが重要です。
当院では接骨院との併用を認めていません。
整骨院を選ぶ際の注意点
▪️診断権がない
整骨院は診断権を持っていません。そのため、初期の段階で整骨院に行くと、見落としてはいけない骨折や神経損傷などがある場合でも、適切な診断を受けられない可能性があります。 「レントゲンを撮ってみないとわからない」といった怪我の判断は、医師にしかできません。
▪️診断書は発行できない
整骨院では、法的な効力を持つ診断書は発行できません。警察への提出や保険請求に支障が出る可能性があります。
▪️治療費の立て替えが発生する可能性
保険会社によっては、医師の同意なく整骨院を受診した場合、治療費の支払いを認めてくれないケースや、一旦全額を立て替える必要があるケースもあります。必ず事前に保険会社に確認しましょう。
交通事故後の治療の流れとあおと整形外科クリニックの役割
交通事故に遭われたら、まずは落ち着いて以下の流れで対応しましょう。
1.警察への連絡と事故状況の確認
加害者・被害者の情報、事故日時、場所などを記録します。
2.病院への受診
身体に異常がなくても、必ず整形外科を受診しましょう。痛みがなくても、後から症状が出ることがあります。
3.診断書の発行依頼
整形外科で医師に診断書を発行してもらい、警察に提出して人身事故の届け出を行いましょう。
4.保険会社への連絡
ご自身の保険会社(および相手の保険会社)に事故と受診状況を連絡します。
あおと整形外科クリニックの対応
交通事故による怪我の患者様に対して、初期の診断から治療、そしてリハビリテーションまでを一貫してサポートしています。
▪️専門医による正確な診断
日本整形外科学会専門医が、詳細な診察と画像検査(レントゲン、必要に応じエコーなど)を通じて、怪我の状態を正確に診断します。
▪️丁寧な治療計画
患者様の症状や生活背景に合わせて、薬物療法、物理療法、注射療法などを組み合わせた最適な治療計画を立案します。
▪️専門的なリハビリテーション
国家資格を持つ理学療法士が、痛みからの回復だけでなく、関節の可動域改善、筋力強化、バランス能力の向上、日常生活動作の再獲得、そして後遺症の予防を目的とした専門的なリハビリテーションを行います。 当クリニックでは、温熱療法、電気治療(干渉波治療器など)、ウォーターベッドなどの物理療法機器もあり、痛みの緩和や血行促進に役立てています。 また、超音波エコーガイド下でのハイドロリリース(筋膜リリース)も、筋肉や筋膜の硬さや癒着が痛みの原因となっている場合に検討し、痛みの早期改善を目指します。
▪️保険会社との連携サポート
当院のスタッフが、保険会社とのやり取りや手続きについて、きめ細やかにサポートいたします。
交通事故による身体の痛みは、適切な時期に適切な治療を行うことが非常に重要です。初期対応を誤ると、後遺症に悩まされたり、保険会社とのトラブルに発展したりする可能性もあります。
もし、あなたが交通事故に遭われ、身体の痛みや不安を感じていらっしゃるなら、まずは信頼できる整形外科であるあおと整形外科クリニックへご相談ください。私たちは、皆様が安心して治療に専念できるよう、全力でサポートいたします。
FAQ
Q1:交通事故に遭ったら、痛みがなくても病院に行った方がいいですか?
A:はい、痛みがなくても必ず整形外科を受診してください。交通事故による怪我は、事故直後には症状が出にくく、数日経ってから痛みやしびれが出現することがよくあります。後から症状が出た場合でも、事故との因果関係を証明するためには、事故直後の受診記録が非常に重要になります。
Q2:整形外科と整骨院を併用することはできますか?
A:はい、医師の指示や同意があれば併用することは可能です。まずは整形外科で正確な診断を受け、治療計画を立ててもらうことが前提です。その上で、医師が整骨院での手技療法などが有効と判断した場合、連携しながら治療を進めることができます。必ず事前に保険会社に確認し、医師にも相談するようにしましょう。
当院では接骨院の併用は認めていません。
Q3:むちうちの治療は整形外科と整骨院のどちらが良いですか?
A:むちうち(頸椎捻挫)の場合でも、まず最初に整形外科を受診してください。むちうちの中には、神経症状を伴うものや、画像診断が必要なケースもあります。整形外科で診断を受け、骨や神経に異常がないことを確認した上で、医師の指示に従い、整形外科での治療やリハビリを進めるのが基本です。手技による治療を希望する場合は、医師と相談の上、整骨院の併用を検討しましょう。
Q4:交通事故の治療費は誰が払うのですか?
A:交通事故による怪我の治療費は、通常、相手方の自賠責保険や任意保険から支払われることになります。まずはご自身の保険会社に連絡し、その後の手続きについて指示を仰ぎましょう。整形外科であれば、保険会社とのやり取りに慣れており、窓口での治療費支払いが不要となる「立て替え払いなし」の対応をしてくれることが多いです。
Q5:治療が長引いた場合、後遺症の診断も整形外科でできますか?
A:はい、交通事故による怪我の治療が長引き、症状が固定(これ以上改善が見込めない状態)したと判断された場合、整形外科医が「後遺障害診断書」を作成することができます。この診断書は、後遺症の認定や損害賠償請求を行う上で非常に重要な書類です。整骨院では後遺障害診断書を作成することはできません。
📚 参考文献
▪️交通事故後の治療はどこへ行けばいい?整形外科と整骨院の違いについて解説 | むさし整形外科リウマチ科
https://musashi-seikeigeka.com/traffic-accident/
▪️交通事故後、病院と整骨院どっちに行けばいいの? | 川越総合法律事務所
https://kawagoe-law.jp/accident/hospital-bone-setting-room/
▪️交通事故にあったら整骨院ではなく病院を受診するべき理由|メディカルクリニック
https://medical.fujita-gr.com/column/20211105/
🔖 監修者情報
監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)
脊柱管狭窄症の特徴と対策 〜「歩くと足がしびれる」は、背骨からのサインかもしれません〜
はじめに:「歩くと足がしびれる」その症状、見過ごしていませんか?
「しばらく歩くと、足がしびれて休みたくなる」
「立っていると腰や太ももが重だるい」
「前かがみになると楽になる」
このような症状がある方は、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)の可能性があります。
脊柱管狭窄症は、背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されることで起こる病気です。
特に中高年の方に多く、加齢による背骨の変化が主な原因とされています。
この記事では、脊柱管狭窄症の特徴・診断・整形外科での治療と予防について、あおと整形外科クリニックでの対応も交えて、わかりやすく解説します。
脊柱管狭窄症とは?
神経の通り道が狭くなって起きる“しびれと痛み”
背骨の中には「脊柱管」と呼ばれる神経のトンネルがあります。
このトンネルが、骨や靭帯の変形、椎間板の膨らみなどにより狭くなることで、神経が圧迫されて痛みやしびれが起こります。
よく見られる症状
- ・ 腰やお尻の痛み・重だるさ
- ・ 太もも・ふくらはぎのしびれ
- ・ 長距離を歩けない(間欠性跛行)
- ・ 前かがみで楽になる
- ・ 足の感覚が鈍くなる・力が入りにくい
座って休むと症状が軽くなり、歩くと再びしびれる、というパターンが特徴的です。
主な原因とリスク要因
▪️加齢による変化
50代以降の方に多く、加齢に伴う以下の変化が影響します。
-
▪️椎間板の膨らみ
-
▪️黄色靭帯の肥厚
- ▪️骨の変形(骨棘形成)
▪️背骨への負担
- 長年の重労働や無理な姿勢
-
▪️背骨の疾患歴(椎間板ヘルニア、側弯症など)
検査と診断方法
▪️問診・視診
- ・ 症状の出る動作や範囲を丁寧に確認
- ・ 神経の反応や筋力のチェック
▪️画像検査
-
▪️レントゲン検査
- 骨の変形や配列の確認
-
▪️MRI検査
- 脊柱管の狭窄状態・神経の圧迫部位を可視化
あおと整形外科クリニックでは、必要に応じて連携先でのMRI検査も案内しています。
整形外科での治療方法
▪️保存療法(手術をしない治療)
▪️薬物療法
・ 消炎鎮痛薬(NSAIDs)
・ 神経障害性疼痛治療薬
・ 血流改善薬(プロスタグランジン製剤など)
▪️リハビリ・物理療法
-
▪️運動療法
- ・ 体幹・下肢筋力トレーニング
- ・ ストレッチ・姿勢指導
▶︎ あおと整形外科クリニックでは、理学療法士による個別リハビリを通じて、症状緩和と再発防止をサポートしています。
▪️手術療法
以下のような症状が進行した場合は、手術の適応となることがあります。
- ・歩行距離が極端に短い
- ・排尿障害や強い筋力低下
- ・保存療法で改善が見られない
当院では、必要に応じて専門病院への紹介・連携も行っています。
再発予防・日常生活でできる対策
▪️正しい姿勢を意識
- ・ 猫背にならないよう、背筋を伸ばす
- ・ 長時間の立ち仕事・座りっぱなしを避ける
適度な運動習慣
- ・ ウォーキングや水中運動など、負担の少ない有酸素運動
- ・ 無理のない範囲で、体幹筋力を維持・強化
▪️体重管理と栄養
- ・ 腰への負担を減らすための適正体重の維持
- ・ ビタミンB群やたんぱく質を意識した食事
放置するとどうなる?
脊柱管狭窄症はゆっくりと進行する病気ですが、放置すると…
- ・ 歩行困難や日常動作の制限
- ・ 筋力の低下による転倒リスク
- ・ 排尿障害・下肢の感覚障害につながる場合も
症状に気づいた時点で、早めの整形外科受診が大切です。
あおと整形外科クリニックでの対応
当院では、以下のような安心の体制で対応しています。
- ・ 丁寧な問診と画像検査による的確な診断
- ・ 薬物療法・リハビリ・ブロック注射などの保存的治療
- ・ 再発防止のための生活指導と継続サポート
「年齢のせいだから仕方ない」と我慢せず、まずはお気軽にご相談ください。
【FAQ】よくある質問
Q1. 脊柱管狭窄症は自然に治りますか?
自然に完全治癒することは少ないため、症状に応じた治療が必要です。
Q2. 歩くとしびれてくるのはなぜ?
歩行時に背筋が伸びて脊柱管が狭くなり神経が圧迫されるためです。
Q3. リハビリで良くなることはありますか?
多くの方が姿勢の見直しや筋力強化で症状の改善を実感しています。
Q4. 手術をしないと治らないのでしょうか?
多くの場合、保存療法で十分な改善が可能です。手術は症状が重い場合の選択肢です。
Q5. 整形外科と整骨院の違いは?
整形外科では医学的な検査と診断に基づく治療を行い、状態に応じて最適な方法を選択できます。
📚 参考文献
- ▪️日本整形外科学会「腰部脊柱管狭窄症」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lumbar_spinal_stenosis.html
- ▪️健康長寿ネット「腰部脊柱管狭窄症」
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/sekityukankyousakushou/about.html
- ▪️MSDマニュアル家庭版「脊柱管狭窄症」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/08-%E9%AA%A8-%E9%96%A2%E7%AF%80-%E7%AD%8B%E8%82%89%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%85%B0%E7%97%9B%E3%81%A8%E9%A6%96%E3%81%AE%E7%97%9B%E3%81%BF/%E8%85%B0%E9%83%A8%E8%84%8A%E6%9F%B1%E7%AE%A1%E7%8B%AD%E7%AA%84%E7%97%87
🔖 監修者情報
監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)
変形性膝関節症の症状と治療法 〜つらい膝の痛みと、上手につきあうために〜
はじめに:階段の昇り降りがつらい…それ、変形性膝関節症かもしれません
「朝起きたとき、膝がこわばる」
「階段を降りるときに膝が痛む」
「正座ができなくなった」
そんな症状でお悩みの方は、変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)の可能性があります。この病気は、中高年を中心に多く見られる膝の軟骨がすり減っていく疾患で、放置すると痛みや変形が進行してしまうこともあります。
この記事では、変形性膝関節症の特徴・原因・治療法について、整形外科での対応を含めてわかりやすく解説します。あおと整形外科クリニックでは、画像検査による正確な診断と段階に応じた治療提案を行っており、症状に合わせたリハビリや生活指導を行っています。
変形性膝関節症とは?
膝の軟骨がすり減ることで起きる“関節の老化”
膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にある関節で、軟骨がクッションの役割を果たしています。しかし、加齢や使いすぎにより軟骨がすり減ると、骨同士がぶつかるようになり、炎症や変形、痛みを引き起こすのが変形性膝関節症です。
変形性膝関節症の主な症状
- ・ 朝起きたときに膝がこわばる
- ・ 階段の昇り降りが痛い
- ・ 膝を曲げ伸ばしすると音が鳴る(ゴリゴリ)
- ・ 正座やしゃがむ動作がしづらい
- ・ 膝の腫れや熱感
- ・ O脚気味になってきた
進行すると、関節の変形や歩行障害、安静時の痛みなども見られるようになります。
原因とリスク要因
▪️性別によるリスク
特に50歳以降の女性に多く、閉経後のホルモン変化が影響するといわれています。
▪️肥満や運動不足
体重が膝に大きな負担をかけます。運動不足による筋力低下も進行を早める要因です。
▪️過去のケガや膝の使いすぎ
スポーツや転倒などの膝の外傷歴、正座や階段の多い生活習慣もリスクになります。
どんな検査をするの?
あおと整形外科クリニックでは、以下のような検査を通じて診断を行います。
▪️X線検査(レントゲン)
膝の関節間の狭まりや骨の変形、骨棘(こつきょく)の有無などを確認します。
▪️MRI検査(必要に応じて)
関節軟骨や半月板の状態、炎症の有無など、より詳細な情報が得られます。
治療方法:症状の段階に合わせて
▪️保存療法(手術以外の治療) 初期〜中期の方におすすめされる治療です。
1. 薬物療法
- ・ 消炎鎮痛薬(内服・外用)
- ・ ヒアルロン酸の関節注射
2. 理学療法(リハビリ)
- ・ 太ももの筋肉(大腿四頭筋)強化
- ・ ストレッチや歩行訓練
- ・ 電気療法や温熱療法
3. 装具療法
- ・ 膝にかかる負担を軽減するサポーターや足底板
- ・ 電気療法や温熱療法
4. 再生医療
- ・ PRP療法などで関節内の炎症を抑え、軟骨修復を促す治療
※当院では症状に応じて提案しています
あおと整形外科クリニックでは、理学療法士による個別リハビリを通じて、無理なく機能改善を目指します。
▪️手術療法(重度の場合)
- ・ 高位脛骨骨切り術(骨の角度を調整)
- ・ 人工膝関節置換術(人工関節に置き換える)
日常生活に大きな支障がある方や、保存療法で改善が見られない方が対象となります。当院では必要に応じて連携病院への紹介を行っています。
日常生活でできる予防とケア
▪️体重管理
1kgの増加が膝に数倍の負担をかけるといわれています。適正体重の維持が予防の第一歩です。
▪️筋力トレーニング
膝の安定には太ももの筋肉(大腿四頭筋)の強化が効果的。無理のない範囲で継続を。
▪️正しい姿勢と動作習慣
- ・ 和式より洋式の生活スタイルへ
- ・ 長時間の正座を避ける
- ・ 階段は手すりを使用
放置するとどうなる?
変形性膝関節症を放っておくと、以下のようなリスクがあります。
- ・ 関節の変形が進行し、歩行困難に
- ・ 慢性的な痛みや腫れにより生活の質が低下
- ・ 最終的に人工関節手術が必要になることも。早期に対処することで進行を抑え、手術を回避できる可能性もあります。
あおと整形外科クリニックでの対応
当院では、次のような包括的な対応を行っています。
- 的確な診断と段階に応じた治療提案
- 理学療法士と連携したオーダーメイドリハビリ
- 日常生活の動作指導やセルフケアの支援
「歳のせいだから仕方ない」とあきらめる前に、まずは一度ご相談ください。
【FAQ】よくある質問
Q1. ヒアルロン酸注射は毎回必要ですか?
症状によりますが、数回の注射で効果が出る方もいます。医師が状態を見ながら判断します。
Q2. リハビリはどのくらいの頻度で行うのが良いですか?
週1〜2回程度から始める方が多いです。症状や目的に応じて調整します。
Q3. 正座はしてはいけませんか?
症状がある間は避けた方が良いです。改善後も負担の少ない姿勢を心がけましょう。
Q4. 予防のための運動は何がおすすめですか?
ウォーキング、スクワット、階段昇降などが効果的ですが、痛みの出ない範囲で行うことが大切です。
Q5. 手術しないと治らないですか?
多くの方が保存療法とリハビリで改善しています。手術は最終手段です。
📚【参考文献】
- ▪️日本整形外科学会「変形性膝関節症」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html - ▪️健康長寿ネット「変形性膝関節症」
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/henkeiseikansetsushou/about.html - ▪️MSDマニュアル家庭版「変形性膝関節症」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/08-骨-関節-筋肉の病気/関節の病気/変形性関節症
🔖【監修者情報】
監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)
骨粗しょう症の早期発見と予防 〜知らないうちに進行する骨の病気を防ぐために〜
はじめに:転んで骨折、それが「はじまり」かもしれません
「ちょっとした段差で転んで、骨にヒビが…」
「背中が曲がってきた気がする」
こうした変化の裏に潜んでいるのが、**骨粗しょう症(こつそしょうしょう)**です。
骨粗しょう症は、骨の密度(骨密度)が減ってスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。高齢の女性に多いイメージがありますが、実は40代から静かに進行しているケースも少なくありません。
この記事では、骨粗しょう症の特徴や早期発見の重要性、あおと整形外科クリニックでの検査・予防の取り組みについて、医師の視点でやさしく解説します。
骨粗しょう症とは?
骨の構造と代謝のバランスが崩れる病気
人の骨は常に「壊す(骨吸収)」と「作る(骨形成)」を繰り返しており、このバランスが保たれることで骨の強さが維持されます。
しかし、加齢やホルモンの変化、生活習慣の乱れなどによりバランスが崩れると、骨がもろくなってしまうのです。
なぜ骨粗しょう症になるのか? 〜主な原因〜
▪️加齢と閉経
特に女性は閉経後、骨を守る役割を果たしていた**女性ホルモン(エストロゲン)**が急激に減少することで、骨密度が大きく下がります。
▪️栄養不足・運動不足
- ・ カルシウムやビタミンDの不足
- ・ 運動不足による骨への刺激不足
▪️喫煙・過度の飲酒・ステロイド薬の長期使用
これらも骨の代謝に悪影響を与える要因です。
骨粗しょう症の症状とリスク
自覚症状が少ない「サイレントディジーズ」
初期の骨粗しょう症にはほとんど自覚症状がありません。
「気づいたときには骨折していた」というケースが多く、背骨の圧迫骨折や大腿骨の骨折などは、寝たきりの原因にもなり得ます。
こんな方は要注意!
- ・ 50歳以上の女性(特に閉経後)
- ・ 両親が骨粗しょう症や骨折歴あり
- ・ 腰や背中が丸くなってきたと感じる
- ・ 身長が以前より縮んだ
- ・ 体重が減ってきた
- ・ 長期にわたりステロイド薬を使用中
骨粗しょう症の検査方法
あおと整形外科クリニックでは、簡単・正確な骨密度検査を行っています。
▪️骨密度検査(DXA法)
骨の中でも腰椎や大腿骨の骨密度を計測。最も信頼性の高い方法とされ、早期発見に有効です。
▪️血液検査
カルシウム、ビタミンD、骨代謝マーカーなどを測定し、骨の状態を総合的に評価します。
治療と予防:整形外科でできること
▪️薬物療法
症状やリスクに応じて、以下のような薬剤を処方することがあります。
-
▪️骨吸収抑制薬(ビスホスホネートなど)
-
▪️骨形成促進薬(副甲状腺ホルモン製剤など)
-
▪️活性型ビタミンD3製剤
あおと整形外科クリニックでは、副作用や体調を見ながら、最適な治療薬を提案しています。
自分でできる予防習慣
▪️食生活のポイント
- ・ 牛乳・ヨーグルト・小魚などのカルシウム
- ・ サケ・キノコ・日光浴などでビタミンD
- ・ 筋肉を支えるたんぱく質も忘れずに
▪️運動のポイント
・ ウォーキング、軽い筋トレ、ストレッチなどの荷重運動
- ・ 転倒しにくい体づくりが、骨折予防につながります
骨粗しょう症を放置するとどうなる?
- ・ 背骨がつぶれる→身長が縮む・腰が曲がる
- ・ 骨折をきっかけに寝たきりに
- ・ 慢性的な痛みや生活動作の制限
高齢者の転倒→骨折→寝たきりという流れは、骨粗しょう症が引き金になることが多くあります。
あおと整形外科クリニックでの取り組み
当院では以下のような体制で、骨粗しょう症の早期発見・予防に取り組んでいます。
- ・ DXA法による正確な骨密度検査
- ・ 医師・リハビリスタッフによる予防指導
- ・ 生活習慣の見直しと定期フォロー
「年齢のせい」と諦める前に、気軽なチェックから始めてみませんか?
【FAQ】よくある質問
Q1. 骨密度検査は痛いですか?
まったく痛みはありません。5〜10分ほどで終わる検査です。
Q2. 骨粗しょう症は男性もなりますか?
女性に多いですが、男性でも高齢になると発症リスクは上がります。
Q3. 骨粗しょう症の薬は一生飲み続けるのですか?
状態により異なります。定期的に効果を評価し、変更や中止の判断を行います。
Q4. サプリメントだけで予防できますか?
食品やサプリで補うことも大切ですが、運動や検査、医師の判断も重要です。
Q5. 健康診断で見つかることもありますか?
骨密度検査が含まれていない限り、健康診断だけでは見逃されやすい病気です。
📚 参考文献
- ▪️日本整形外科学会「骨粗鬆症」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osteoporosis.html
- ▪️e-ヘルスネット「骨粗しょう症」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-043.html
- ▪️MSDマニュアル家庭版「骨粗しょう症」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/08-%E9%AA%A8-%E9%96%A2%E7%AF%80-%E7%AD%8B%E8%82%89%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%AA%A8%E7%B2%97%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E7%97%87/%E9%AA%A8%E7%B2%97%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E7%97%87
🔖 監修者情報
監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長