腱板断裂とは?
腱板とは、肩の骨(上腕骨)を肩甲骨のくぼみに安定させる4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)と腱の集合体です。これらが協調して働くことで、腕をスムーズに動かすことができます。
腱板断裂とは、この腱の一部またはすべてが切れてしまう状態のことを指します。一度損傷すると自然にくっつくことはなく、症状が進行すると腕を上げられない・力が入らないといった日常生活への影響が大きくなります。
原因と発症のメカニズム
▪️外傷性(急性)
- ・ 転倒して肩を強打した
- ・ 重い荷物を無理に持ち上げた
- ・ スポーツ中に肩を強くひねった
比較的若い世代でも起こり得ます。
▪️変性(加齢性)
- 加齢とともに腱がもろくなり、日常の動作の繰り返しで徐々に切れていくタイプ
- 40代以降に多く、特に60代以上の男性に多発
- 明確なきっかけがなく、「気づいたら腕が上がらない」というケースも
初期の違和感や軽い痛みを放置すると、切れ目が大きくなってしまうことがあります。
症状の特徴と五十肩との違い
項目 | 腱板断裂 | 五十肩 |
---|---|---|
発症 | 外傷・加齢など明確な原因あり | 特にきっかけがない |
痛み | 動かすとズキンと痛む/力が入らない | 夜間痛が強い/動かすと鈍痛 |
可動域 | 腕を上げようとすると“力が入らない” | 痛みで可動域が制限される |
回復 | 保存療法や手術が必要になることも | 多くは自然経過+リハビリで回復 |
検査 | 超音波/MRIで断裂を確認 | ― |
診断方法と受診の目安
腱板断裂は、問診・視診・動作テスト・画像診断により正確に診断されます。
診察の流れ
- ・ 症状の経緯・日常で困っている動作を確認
- ・ 腕の動き・肩の高さ・左右差などを診る
- ・ 超音波検査またはMRI検査で腱の断裂の有無・範囲を確認
以下のような症状がある方は早めの受診をおすすめします
- ・ 腕を上げようとすると“スッと力が抜ける”感じがする
- ・ 夜間に肩の痛みで目が覚める
- ・ 洋服の着脱や洗髪がつらくなってきた
- ・ 肩を打った後、痛みが続いている
早期診断・早期対応が、腱板断裂では特に重要です。
腱板断裂の治療法(保存療法・手術)
▪️保存療法(手術以外の方法)
- ・ 消炎鎮痛薬・湿布などの薬物療法
- ・ 肩の負担を減らす動作指導・生活指導
- ・ リハビリテーション
痛みが軽度で、日常生活に大きな支障がない場合は保存療法で経過を見ることができます。
▪️手術療法
- 完全断裂、または保存療法で改善が見込めない場合に検討
- 主に関節鏡視下手術(内視鏡)による腱板縫合が行われます
- 術後もリハビリが必須で、数ヶ月かけて機能を回復させていきます
リハビリと日常生活での注意点
腱板断裂の治療において、リハビリテーションは非常に重要です。
当院でのリハビリの流れ
- ・ 急性期は痛みを抑えつつ、動かせる範囲での訓練からスタート
- ・ 拘縮予防のため、可動域訓練(ROM訓練)を行う
- ・ 痛みが落ち着いてきたら筋力強化、姿勢改善、動作指導へ移行
日常生活でのポイント
- ・ 腕を無理に動かさない
- ・ 重い物を持ち上げない
- ・ 長時間の同じ姿勢を避ける
- ・ 痛みがある側の肩を下にして寝ない
あおと整形外科での診療体制
- 正確な画像診断(エコー・MRI紹介)
- 医師・理学療法士によるチーム対応
- 患者さまの生活スタイルに合わせた治療選択
を通じて、腱板断裂の早期回復と再発予防をサポートしています。
まとめ
肩の痛みや違和感は、放っておくと回復までの時間が延びるだけでなく、日常生活に大きな支障をもたらします。
「腕が上がらない」「力が入らない」などの症状がある場合は、五十肩ではなく腱板断裂の可能性も。
早めの診断と適切な治療で、元の生活に近づけるサポートができます。
気になる症状がある方は、ぜひ一度あおと整形外科クリニックへご相談ください。
FAQ(腱板断裂に関するよくある質問)
Q1. 腱板断裂と五十肩の違いは何ですか?
腱板断裂は腱が切れてしまう状態で、「力が入らない・腕が上がらない」といった症状が特徴です。五十肩は関節の炎症が主で、夜間痛や動作制限が主体です。画像診断によって区別できます。
Q2. 自然に治ることはありますか?
軽度の断裂であれば保存療法で症状が改善することもありますが、自然に腱が元通りにくっつくことはありません。放置せずに整形外科での評価が必要です。
Q3. 手術をしないと治らないのでしょうか?
状態によっては手術が必要ない場合も多く、まずは薬やリハビリなどの保存療法を行います。症状や生活への影響を踏まえ、必要に応じて手術を検討します。
Q4. リハビリにはどれくらい通う必要がありますか?
症状や治療方針によりますが、数週間〜数ヶ月の継続が推奨されます。当院では患者様の状態に応じたプログラムを理学療法士が作成します。
Q5. 高齢でも治療やリハビリは受けられますか?
はい、年齢にかかわらず安全に行える方法を選択します。特に高齢の方では筋力低下を防ぐため、早期からの対応が大切です。
📚【参考文献】
- ・ 日本整形外科学会「腱板断裂」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html
- ・ MSDマニュアル「腱板損傷」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル
🔖【監修者情報】
監修:日本整形外科学会専門医 青戸 寿之(あおと整形外科クリニック 院長)